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農地転用の費用と期間|宅地にできない土地の見分け方


農地転用の費用と期間|宅地にできない土地の見分け方
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

牛飼い君
安い畑を見つけたんだ。ここに小屋を建てて、いずれ家も建てたい。畑だから、埋めて均せばいいんだよね?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
待った。その一言が、農地でいちばん高くつく。農地を農地以外にすることを「転用」といって、原則として知事の許可が要るんだ。しかも土地によっては、金をいくら積んでも許可が下りない。まずは、その土地の「色」を調べるところからだよ。

「買った畑に家を建てたいのだが、農地転用っていくらかかるのか」 「そもそも、どの土地なら宅地にできるのか」

移住先で土地を探している人、実家の畑を持て余している人、資材置場や駐車場に変えたい人。この2つは必ず同時に出てくる。

先に答えを書く。農地転用でいちばん大事なのは、費用でも期間でもなく「その農地が転用できる区分かどうか」だ。農地は営農条件と市街地化の状況で5種類に区分されていて、上位3区分は原則として不許可。ここに当たった土地は、行政書士に100万円払っても、造成業者を10社集めても、宅地にはならない。

逆に、区分さえ通れば費用は思ったほどかからない。許可申請そのものに法定の手数料は原則として置かれていないし、地目変更登記の登録免許税はゼロだ。熊本地方法務局も「地目変更登記は,登録免許税がかかりません(無料)」と明記している。

私は飼料と畜産資材の代理店営業を13年やり、数百軒の農家の庭先を回ってきた(営業そのものは今年で20年目になる)。実家も和牛の繁殖と野菜をやっている。その現場で先に伝えておきたいのは一つ。「転用できると思って買った」は、順番を間違えているということだ。

先に結論。農地転用の5原則

① 転用=農地を農地以外のものにすること。自分の農地を自分で転用するなら農地法4条、転用目的で売買・貸借するなら5条(売主と買主の連署)。宅地・駐車場・資材置場・植林、どれも転用だ。

② 許可権者は都道府県知事(指定市町村の長)。農業委員会は原則として経由窓口だが、権限移譲を受けた市町村では農業委員会自身が許可権者になる(宇都宮市など)。自分の市町村がどちらかは窓口で確認を。例外は市街化区域で、ここだけはあらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要(4条1項7号・5条1項6号)。

③ 費用の主役は「人に頼む金」と「土を直す金」。申請手数料は原則なし、地目変更登記の登録免許税もゼロ。かかるのは行政書士報酬(5条の全国平均12万186円・最頻値10万円)と、整地・土盛りなどの造成費だ。

④ 期間は「標準処理期間+締切待ち」で読む。宇都宮市は受付締切日から許可書交付まで42日、北海道知事許可は70日。そこに月1回の申請締切が前に乗るので、実感としては2〜3か月を見ておく。

⑤ 転用できない土地がある。農用地区域内農地(青地)・甲種農地・第1種農地は原則不許可。しかも登記簿の地目を見ても分からない。判定は市町村の農振担当課と農業委員会にしかできない。

⚠️ 本記事は2026年9月11日時点で公開されている法令・公的資料をもとにした一般的な整理です。農地転用の許可基準、申請の締切、標準処理期間、造成費の水準は市町村ごと・都道府県ごとに異なります。実際の可否と金額は、必ず転用したい農地がある市町村の農業委員会と、農業振興地域を担当する部署でご確認ください。

この記事でわかること

  • 「農地転用」の定義と、4条と5条の使い分け
  • 許可制と届出制の分かれ目(=市街化区域かどうか)
  • 農地区分5種類と、それぞれの許可方針
  • 費用の内訳(行政書士報酬の全国統計・登記・造成費)と、100坪でいくらか
  • 期間の実像(標準処理期間42日/70日と、月次の締切サイクル)
  • 転用できない土地の見分け方と、青地を外す「農振除外」の現実
  • 許可が下りない4つの型と、行政書士に頼むかどうかの判断基準

農地転用とは——「土地の身分」を変える手続き

まず定義から。北海道の農地調整課はこう書いている。

人為的に農地(採草放牧地)を農地(採草放牧地)以外のものにすることを農地転用といいます。

宅地にするのも、駐車場にするのも、資材置場にするのも、植林するのも、全部「転用」だ。建物を建てなくても転用になるところが、いちばん誤解されやすい。北海道は「砂利採取やイベント会場などで農地を一時的に使用する場合にも、許可が必要となります」とも明記している(ただし区画や形質を変えず、1〜2日程度のごく短期間で、終了後すぐ耕作可能な状態に戻ることが明らかな場合は、転用に当たらない取扱いをすることがある、とも書かれている)。

そして、無許可でやった場合の重さも先に書いておく。北海道の説明は簡潔だ。

許可を受けなかったり、届出せずに農地を転用すると、売買などの法律行為が無効になり、所有権移転の登記もできません。また、罰せられることがあります。

罰則は農地法第64条。3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。法人が業務に関してやった場合は、第67条第1号により1億円以下の罰金が科される。さらに第51条で、都道府県知事等は工事の停止命令や期限を定めた原状回復命令を出せる。命令に従わなければ土地の地番を公表でき、行政が自ら原状回復して費用を違反者に負担させることもできる(同条3項〜6項)。

埋めてしまってから相談に行く——これがいちばん高くつくコースだ。

なお、逆に「許可が要らない転用」もある。宇都宮市の案内によれば、耕作者が自ら耕作している農地に農業用施設(農業用倉庫等)を設置する場合で、2アール未満のものは転用許可が不要だ(ただし農業用施設用地とするための願出は必要)。畑の隅に小さな農機具小屋を建てたい、という話はここで解決することがある。

4条と5条——申請するのが誰か、で分かれる

条文名だけ聞くと難しく見えるが、分岐は単純だ。土地の持ち主が変わるかどうか、それだけである。

農地法4条農地法5条
場面自分の農地を、自分で転用する転用目的で買う・借りる(権利の設定・移転を伴う)
申請者農地の所有者(=転用する本人)譲渡人と譲受人が連署で申請
典型例自分の畑に自宅を建てる/駐車場にする畑を買って家を建てる/貸して資材置場にする
許可権者都道府県知事等都道府県知事等
市街化区域農業委員会へ届出農業委員会へ届出

移住者や事業者が関わるのは、ほぼ5条だ。実際、農林水産省の集計でも令和5年の農地転用は4条が2万1,480件(1,303ha)に対し、5条は9万5,884件(8,512ha)。件数の約8割、面積の約87%が5条である。

ここで大事なのは、5条が「転用」と「売買(貸借)」を1本の許可で処理する制度だという点だ。農地を普通に買うときの農地法3条の許可とは別物で、審査するのも農業委員会ではなく都道府県知事等になる。つまり、「農地として買う」と「転用目的で買う」は、入口からまったく別の窓口ということだ。

そして5条には、3条と同じ怖さがある。許可を受けずにした権利移動は効力を生じない——所有権が動かない。北海道が「売買などの法律行為が無効になり、所有権移転の登記もできません」と書いているのは、このことだ。

許可か届出か——市街化区域だけが、別の世界

農地法4条1項7号と5条1項6号に、はっきりした例外がある。

市街化区域内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合

市街化区域は、都市計画法で「すでに市街地を形成している区域、およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とされたエリアだ。ここはもともと市街地にする前提の土地なので、農地であっても許可制ではなく届出制になる。

届出のほうが、添付書類も一気に軽くなる。農林水産省「農地転用の手続」によれば、許可申請には資金計画の資力・信用を証する書面や施設の配置図など7種類の書類が要るのに対し、市街化区域の届出は、土地の位置を示す地図と登記事項証明書(全部事項証明書)、それに賃借権があればその解約の許可等を証する書面で足りる。

宇都宮市は「市街化区域の届出は、随時受付しています」としている。月1回の締切に間に合うかどうか、を気にしなくていい——これが届出制のいちばん大きな違いだ。

規模も小さくない。令和5年の実績では、許可による転用が6万3,581件(6,650ha)、市街化区域の届出による転用が5万3,783件(3,164ha)。件数ベースでは、転用のうち4割以上が「届出で済んでいる」計算になる。

ただし、ここに落とし穴もある。市街化区域の農地は宅地並みに評価され、値段も税金も高い。「安い畑を買って家を建てる」という当初の目的から、静かに離れていく。

(PR) 窓口へ行く前に、用語の地図を1枚持っておく

農振・青地・甲種・立地基準・一般基準——農業委員会の窓口では、この手の単語が前置きなしで飛んでくる。制度そのものはネットの解説記事より条文と自治体の告知のほうが正確なのだが、いきなり読むと骨が折れる。実務書を1冊手元に置いて用語を押さえておくと、相談の密度がまるで変わる。

農地区分5種類——ここで結果の8割が決まる

農林水産省の「農地転用許可制度の概要」は、制度の狙いをこう説明している。

優良農地を確保するため、農地の優良性や周辺の土地利用状況等により農地を区分し、転用を農業上の利用に支障が少ない農地に誘導するとともに、具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認めないこととしている。

これが立地基準だ。区分は5つ。上から順に固く、下にいくほど緩い。

農地区分どんな農地か許可の方針
農用地区域内農地(青地)市町村の農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地原則不許可(農用地利用計画で指定された用途=農業用施設、農産物加工・販売施設等の場合に例外許可)
甲種農地市街化調整区域内で、農業公共投資後8年以内の農地/集団農地で高性能農業機械での営農が可能な農地原則不許可(土地収用事業の認定を受けた施設、農業用施設、集落接続の住宅等は500㎡以内まで等の例外)
第1種農地10ha以上の集団農地/農業公共投資の対象農地/生産力の高い農地原則不許可(土地収用法対象事業、農業用施設、集落接続の住宅等の例外)
第2種農地農業公共投資の対象になっていない小集団の生産力の低い農地/市街地として発展する可能性のある区域内の農地(群馬県は「鉄道の駅が500m以内にある等」と例示)第3種農地に立地困難な場合等に許可
第3種農地都市的整備がされた区域内の農地/市街地にある区域内の農地(群馬県は「鉄道の駅が300m以内にある等」と例示)原則許可

読み方はこうだ。上3つに当たったら、家は建たないと思ったほうがいい。甲種・第1種の例外にある「集落接続の住宅等」は、既存の集落に接している土地に、ほかに適地がない場合に限って認められるもので、しかも甲種農地では500㎡以内という上限まで付く。「集落から離れた見晴らしのいい畑」は、この例外からいちばん遠い。

逆に第2種・第3種なら、道は開いている。第2種は「もっと市街地寄りの土地では代替できない」ことを示す必要があるが、第3種は原則許可だ。

牛飼い君
じゃあ僕が見つけた畑がどれなのか、登記簿で分かる?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
分からないんだ。登記簿に書いてあるのは地目と地積だけで、「青地かどうか」はどこにも載っていない。eMAFF農地ナビの「農振法区分」で一次確認はできるけど、最終判定は市町村の農振担当課。だから買う前に、役所で確定させるしかないんだよ。

費用——申請そのものより、「人」と「土」に金がかかる

内訳を4つに割って考える。

① 許可申請の手数料

農林水産省が公表している「農地転用の手続」には、申請書の添付書類は7種類まで細かく書かれているが、手数料の定めは出てこない。宇都宮市・群馬県・北海道の案内にも、申請手数料の記載はない。農地転用の許可申請そのものに、まとまった申請手数料はかからないと考えてよい——ただし、これは「金額表が存在しない」ことを根拠にした整理なので、念のため申請先の農業委員会で確認してほしい。

実費としてかかるのは、添付する登記事項証明書・公図・住民票などの交付手数料と、図面の作成費だ。

② 行政書士に頼む場合の報酬

ここが最大の変動要因になる。日本行政書士会連合会は行政書士法第10条の2第2項に基づいて5年に1度、全国的な報酬額統計調査を実施していて、最新は令和7年度(令和8年1月実施)だ。農地関係だけ抜き出す。

業務回答者数平均最頻値最小値最大値
農地法4条許可申請273人9万6,893円8万円8,800円80万円
農地法5条許可申請501人12万186円10万円5,000円161万8,720円
(参考)農地法3条許可申請493人5万8,616円5万円5,000円50万円
(参考)農地法3条の3の届出174人2万3,502円1万1,000円1,000円50万円

平均だけ見ると身構えるが、分布を見ると景色が変わる。5条許可申請の回答501人のうち、5万円以上10万円未満が42.1%、10万円以上15万円未満が29.1%。この2区分だけで7割を占める。ごく普通の宅地転用なら、5万〜15万円のレンジに収まると読める。

平均を12万円まで押し上げているのは、最大値161万8,720円のような大規模案件だ。太陽光、造成を伴う事業用地、農振除外から手がける案件——そういうものが混じっている。自分の案件がどちらの世界の話かを、見積もり時にはっきりさせておきたい。

なお、この調査の金額には消費税が含まれ、立替金(登記事項証明書代など)は含まれない。

③ 地目変更登記

許可が下りて工事が終わったら、登記簿の地目を「畑」から「宅地」に変える。ここでいい知らせがある。

熊本地方法務局は、非農地通知書による地目変更の案内の中で、地目変更登記一般についてこう書いている。

地目変更登記は,登録免許税がかかりません(無料)。 申請されてから登記が完了するまで,1週間から2週間程度のお時間をいただきます。

税金はゼロ、期間は1〜2週間。所有権移転登記(売買なら本則1,000分の20)とは別世界だ。同局は「登記の申請は,ご本人様で行う方法と土地家屋調査士に依頼する方法があります」とも書いていて、自分で申請する道も正面から案内されている。法務局は畑から宅地に変更した場合の記載例まで公開していて、添付情報は許可書(農地法の許可書。場合により農業委員会の現況証明書や都市計画法の許可書)と書かれているだけだ。

ただし、これは義務でもある。不動産登記法第37条第1項は「地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない」と定める。正当な理由なく怠ると同法第164条第1項により10万円以下の過料だ。土地家屋調査士に依頼する場合の報酬は、事務所ごとの自由設定なので、見積もりを取ってほしい。

④ 造成費

家を建てるなら、田畑を宅地として使える状態にする工事が要る。実際の金額は土地の高低差と地盤次第で、ここに全国相場は存在しない。

そこで、国が「評価」に使っている単価を目安として置いておく。国税庁は市街地農地などを相続税・贈与税で評価するとき、宅地並みの価額から造成費を差し引くのだが、その造成費に都道府県ごとの金額表を定めている。令和8年分・栃木県の平坦地の表はこうだ。

工事費目単価(令和8年分・栃木県)
整地費1㎡当たり800円
伐採・抜根費1㎡当たり1,100円
地盤改良費1㎡当たり2,300円
土盛費1㎥当たり8,100円
土止費(擁壁)擁壁1㎡当たり9万600円

これは工事の見積もりではなく、財産評価のための基準額だ。実際の工事費そのものではない点は押さえたうえで、桁の感覚をつかむ材料としては十分に使える。

特に重いのが土止費(擁壁)の9万600円/㎡。道路より低い田を埋め立てて宅地にする場合、土砂の流出を防ぐ擁壁が要る。この一項目だけで、行政書士報酬が霞む。「安い田んぼ」が安いのには、たいてい理由がある。

100坪(約330㎡)で組んでみる

数字を一度、形にしてみる。

項目自分でやる場合行政書士に頼む場合
転用許可申請の手数料原則なし原則なし
添付書類の実費(登記事項証明書・公図等)数千円程度実費は別途請求が通例
行政書士報酬(5条)0円5万〜15万円が約7割(最頻値10万円)
地目変更登記の登録免許税0円0円
地目変更登記の代行0円(自分で申請可)土地家屋調査士に依頼するなら別途
整地費の目安(330㎡×800円)約26万円約26万円
土盛り・擁壁が必要な場合桁が変わる(擁壁は1㎡当たり9万円台)同左

平坦で、道路と高低差がなく、水はけのいい畑なら、手続きと整地で数十万円の世界だ。道路より低い田なら、造成だけで100万円単位に跳ねる。同じ「100坪の農地」でも、費用は10倍違いうる。値札より先に、高低差と地盤を見る。

期間——標準処理期間に、締切待ちを足す

農地転用は「月次のリズム」で動く。農業委員会の総会が月1回しか開かれないからだ。

自治体が公表している数字を2つ並べる。

  • 宇都宮市(農地転用許可の指定市町村)……市街化区域以外の許可申請の締切は毎月月末(閉庁日ならその前の開庁日)。「申請書の受付締切日から許可書の交付までの事務の標準処理期間を42日と定め」ている。市街化区域の届出は随時受付。
  • 北海道(知事許可)……「知事許可の場合、申請してから許可を受けるまでの標準的な期間は70日(そのうち受付窓口の農業委員会の経由期間は60日)」。

42日と70日。起算点が違う(宇都宮市は締切日から、北海道は申請から)ので単純比較はできないが、差の中身は許可権者が近いか遠いかだ。宇都宮市は平成30年10月1日から農地転用許可の指定市町村になっていて、知事に送らず市内で完結する。平成28年4月の制度見直しで、4ha超の許可権限も国との協議を付したうえで都道府県・指定市町村に移り、2〜4haの国協議は廃止された。自分の市町村が指定市町村かどうかで、体感速度は変わる。

流れはこうなる。

段階やること目安
0農業委員会・農政担当課へ事前相談土地を決める前に
0’青地なら農振除外、地域計画区域内なら地域計画の変更ここで半年〜が乗る
1申請書+添付書類7種を作成資金計画・図面・同意書
2農業委員会へ提出(月次の締切)宇都宮市は毎月月末
3現地調査・農業委員会の総会で議決、意見を付して送付30a超なら都道府県農業委員会ネットワーク機構の意見聴取が入る
4都道府県知事等が許可(4ha超は農林水産大臣に協議)—
5許可書の交付宇都宮市42日/北海道70日
6工事 → 地目変更登記(変更の日から1か月以内)登記完了まで1〜2週間

つまり、締切に間に合っても2か月前後、1日遅れると3か月コース。着工したい時期から逆算して、少なくとも半年前には窓口に顔を出しておきたい。

転用できない土地の見分け方

ここが本題だ。費用も期間も、この判定が通った先の話である。

登記簿では分からない。見るべきは「農振」

農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基づいて、都道府県が農業振興地域を指定し、市町村がその中で農用地区域を定める。この農用地区域内の農地が、通称「青地」だ。

青地は農地法5条2項1号イで不許可と定められている。だから壁は二重ではなく直列だ。先に農振除外で青地を外し、そのうえで転用許可を取るという二段構えになる(農地転用許可を得た土地には、農振法第15条の2の開発許可は不要=同条1項ただし書3号)。

そして厄介なことに、登記事項証明書にも、公図にも、「青地」とは書いていない。確定させるには次の3か所を回る。

  1. 市町村の農業振興地域を担当する課(農政課・農政企画課など)……青地かどうかの判定
  2. 市町村の農業委員会……農地区分(甲種・第1種・第2種・第3種)と転用の見込み
  3. 都市計画担当課……市街化区域か市街化調整区域か、区域区分そのものがあるか

地番を控えて、この3か所を1日で回る。これが農地を買う前の最重要作業だ。一次あたりは農林水産省のeMAFF農地ナビの「農振法区分」で自宅からできる(農用地区域かどうかが1筆ごとに表示される)。ただし農地台帳に未記載だと「設定なし」と出るし、台帳と現況がずれることもあるので、最終判定は必ず市町村の農振担当課で取る。

青地を外す「農振除外」は、年に何回も入口が開かない

「じゃあ青地から外してもらえばいい」という話になる。これが農振除外(農用地区域からの除外)だ。農振法第13条第2項が定める要件をすべて満たす場合に限ってできる。

  1. 農用地区域以外の土地利用の状況からみて、その土地を農地以外に使うことが必要かつ適当で、ほかの土地で代えることが困難であること
  2. 地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないこと
  3. 農用地の集団化・農作業の効率化など、土地の農業上の効率的・総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
  4. 効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと
  5. 農業用用排水施設などの機能に支障を及ぼすおそれがないこと
  6. 一定の土地については、土地改良事業完了後8年を経過していること

とりわけ1つ目の「ほかに代替すべき土地がない」が重い。白地(農用地区域外)に適地があれば、そちらへ行きなさいという話になる。

時間も相応にかかる。愛知県豊田市の案内が具体的だ。農振除外の申出受付は2月・5月・8月・11月の月初め3日間(土日祝を除く)に限られ、「農振除外の受付から計画変更まで約6か月かかります」と明記されている。年4回しか扉が開かず、通っても半年。しかも豊田市は「申出した案件がすべて認められるわけではなく、事業者等からの申出の内容と市の農振除外の考え方が一致した場合に除外をすることができます」と釘を刺している。

さらに2025年(令和7年)以降は、もう一段増えた。市町村が2025年3月末までに策定した地域計画に載っている農地は、転用申請の前に地域計画からの除外が必要になる。宇都宮市は「令和7年4月1日以降において、申請地が『地域計画区域内』の場合は、農地転用許可申請の前に、地域計画の変更手続き(対象農地を地域計画から除外)が必要となります」と告知している。豊田市も、農振除外の申出と同時に地域計画変更申出書を出すよう求めている。

青地+地域計画内の農地は、転用のスタートラインに立つだけで1年近くかかることがある。これが現在地だ。

許可が下りない4つの型(一般基準)

区分をクリアしても、まだ関門がある。一般基準だ。農地法5条2項3号・4号と、農林水産省の制度概要から整理すると、落ちる型は4つに分けられる。

① 転用の確実性が認められない 他の法令の許認可の見込みがない、関係権利者の同意がない、といったケース。建築基準法上の接道がない土地、都市計画法の開発許可が取れない土地は、ここで止まる。農地法だけ見ていても通らない。

② 資金計画に資力・信用が認められない 条文は「必要な資力及び信用があると認められないこと」を不許可事由に挙げている。だから申請書の添付書類に「資金計画に基づいて事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面」が入っている。買うだけで手一杯で、建てる金の裏づけがない——これは落ちる。

③ 周辺農地への被害防除措置が適切でない 土砂の流出・崩壊のおそれ、農業用用排水施設の機能への支障、日照や通風の問題。隣の田に水が回らなくなる造成は通らない。擁壁や排水計画は、費用の話であると同時に、許可の話だ。

④ 目的が曖昧・造成だけ 農林水産省は「具体的な転用目的を有しない投機目的、資産保有目的での農地の取得は認めない」と明言している。群馬県も一般基準の説明で「土地の造成だけを行う転用は、市町村が行うもの等を除き不許可」としている。「とりあえず宅地にしておいて、あとで考える」は制度上あり得ない。

このほか、一時転用(資材置場など期限を切った利用)では、使い終わったあとに農地へ確実に戻せるかも審査される。

行政書士に頼むか、自分でやるか

判断の軸を、正直に4つ並べる。

自分でやれる可能性が高いケース

  • 市街化区域の届出……添付書類は地図と登記事項証明書が中心。随時受付。ここに10万円払う理由は薄い。
  • 第3種農地で、平坦・接道済み・自宅1軒……立地基準が原則許可で、図面も単純。窓口で様式をもらって書ける範囲に収まることが多い。
  • 地目変更登記……登録免許税ゼロ、法務局が記載例まで公開、完了まで1〜2週間。熊本地方法務局も「ご本人様で行う方法」を先に挙げている。

頼んだほうが安いケース

  • 農振除外から始まる……年4回の受付窓口、約6か月、地域計画の変更まで絡む。段取りを間違えると1年単位で遅れる。
  • 他法令が絡む……都市計画法の開発許可、建築基準法の接道、道路占用、林地との境界。ここは横断的に知っている人間の価値が高い。
  • 5条で売主がいる……連署が要るので、売主の書類集めと期限管理が発生する。他人のスケジュールを握る仕事は、プロに任せたほうが揉めない。
  • 事業用地・太陽光・造成を伴う……報酬統計の最大値161万8,720円はこちら側の世界。逆に言えば、報酬に見合うだけ落ちるリスクが高い案件ということだ。

見積もりを取るときは、「どの区分の農地か」「農振除外は要るか」「他法令は何が絡むか」の3点を先に伝える。これが違えば、同じ「5条許可申請」でも金額は5万円と50万円に分かれる。統計の最小値5,000円と最大値161万8,720円の間には、そういう中身の差がある。

さんぼう君の視点:順番を間違えた土地は、戻ってこない

農地の話でいちばんよく聞く失敗の型は、これだ。

安く出ていた畑を買う。値段で合意して、契約して、代金を払う。それから家を建てようとして役所に行くと、「ここは農用地区域なので転用できません」と言われる。農地としては持っている。けれど、目的だったことは何一つできない。

この型がやっかいなのは、誰も嘘をついていないことだ。売主は「畑を売る」と言った。登記簿にも「畑」としか書いていない。青地かどうかは、登記簿にも公図にも現地にも書いていない。市町村の農政担当課の地図(とeMAFF農地ナビの農振法区分)にだけ、色が塗られている。

だから順番は、これしかない。役所 → 土地 → 契約。地番が分かった時点で、①農政担当課で青地かどうか、②農業委員会で農地区分と転用の見込み、③都市計画担当課で区域区分。この3つを聞いてから値段の話をする。1日で回れる。買ってからでは、どう頑張っても取り返せない。

もう一つ、現場を回ってきて思うことがある。制度は決して「転用させないため」だけにあるわけではない、ということだ。令和5年の農地転用面積は1万6,184ha。ピークだった昭和48年の6万7,720haと比べれば4分の1以下だが、それでも毎年これだけの農地が住宅や店舗や道路に姿を変えている。必要な転用は、ちゃんと通っている。

止められているのは、まとまった良い農地を虫食いにする転用だ。集団農地の真ん中に1軒建つと、そこへ車が入り、草が飛び、水利の調整が狂い、隣の田から順に耕作をやめていく。現場を回っていると、そうやって崩れていった一角の話をよく耳にする。区分がなぜ「集団農地10ha以上」や「農業公共投資後8年以内」で線を引いているのか——あれは役所の意地悪ではなく、周りで耕している人を守るための線だ。

そのうえで、明るい話もしたい。第2種・第3種の農地は全国にいくらでもあるし、市街化区域なら届出だけで転用できる。転用できる土地の候補を役所から先に教えてもらってから探すほうが、不動産広告を眺めているよりずっと早い。窓口の人は、たいてい親切に教えてくれる。

買うのがまだ重いなら、借りるという道もある。土は逃げない。順番さえ間違えなければ、急ぐ必要もない。マイペースでいこう。

よくある質問(FAQ)

Q. 農地転用の費用は、結局いくら見ておけばいいですか?

手続き部分は、行政書士に頼んで5万〜15万円が中心帯です。日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)では、農地法5条許可申請の回答501人のうち5万〜10万円未満が42.1%、10万〜15万円未満が29.1%と、この2区分で約7割を占めます(平均は12万186円、最頻値10万円)。申請そのものの手数料は原則かからず、地目変更登記の登録免許税もゼロです。金額が跳ねるのは造成で、国税庁が令和8年分の財産評価に使う栃木県の金額表では整地費800円/㎡・土盛費8,100円/㎥・擁壁9万600円/㎡。道路より低い田は、造成だけで桁が変わります。

Q. 申請から許可まで、どのくらいかかりますか?

自治体の公表値では、宇都宮市が受付締切日から許可書交付まで42日、北海道の知事許可が70日(うち農業委員会の経由期間60日)です。ただしこれは「締切に間に合ったあと」の日数で、申請の締切は多くの市町村で月1回(宇都宮市は毎月月末)。実感としては2〜3か月を見てください。青地で農振除外から始まる場合は、豊田市の例で受付が年4回・計画変更まで約6か月が上乗せされます。市街化区域の届出は随時受付で、書類も軽くなります。

Q. 農地転用とは、具体的に何をすることですか?

農地を農地以外のものにすることです。宅地・駐車場・資材置場・工場用地・植林——建物を建てなくても転用に当たります。北海道は、砂利採取やイベント会場としての一時的な使用にも許可が要ると案内しています(区画・形質を変えず1〜2日程度で、終了後すぐ耕作可能な状態に戻ることが明らかな場合は、転用に当たらない取扱いをすることがあります)。無許可でやると売買などの法律行為が無効になり、所有権移転の登記もできず、農地法64条の3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人なら67条で1億円以下の罰金が科されます。

Q. 4条と5条は、どう違うのですか?

土地の持ち主が変わるかどうかです。自分の農地を自分で転用するのが4条(申請者は所有者本人)、転用目的で売買・貸借するのが5条(譲渡人と譲受人が連署で申請)。移住者が畑を買って家を建てるなら5条です。令和5年の実績では、件数の約8割・面積の約9割が5条でした。どちらも許可権者は都道府県知事(指定市町村の区域は指定市町村の長)です。農業委員会は原則として経由窓口ですが、権限移譲を受けた市町村では農業委員会自身が許可権者になります。

Q. 市街化区域の農地は、許可なしで転用できると聞きました。

そのとおりです。農地法4条1項7号・5条1項6号により、市街化区域内の農地はあらかじめ農業委員会に届け出れば、許可を受けずに転用できます。添付書類も、土地の位置を示す地図と登記事項証明書(全部事項証明書)、賃借権があればその解約の許可等を証する書面、と大幅に軽くなります。宇都宮市は「市街化区域の届出は、随時受付しています」としています。ただし市街化区域の農地は評価も税も宅地並みなので、「安い畑を買う」という目的とは両立しにくい点は覚えておいてください。

Q. どうやって「転用できない土地」を見分ければいいですか?

登記簿では見分けられません。農用地区域(青地)かどうかは、市町村の農業振興地域を担当する課の地図(一次あたりならeMAFF農地ナビの「農振法区分」)にしか出てこないからです。地番が分かった時点で、①農政担当課で青地かどうか、②農業委員会で農地区分(甲種・第1種・第2種・第3種)と転用の見込み、③都市計画担当課で市街化区域か調整区域か、の3か所を回ってください。農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則不許可。特に「集落から離れた、まとまった農地の中にある土地」は、まず通らないと考えて構いません。

Q. 転用の許可が出たあと、登記はどうすればいいですか?

工事が終わって地目が実際に変わったら、変更があった日から1か月以内に地目変更登記を申請します(不動産登記法37条1項)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(同164条1項)。登録免許税はかからず、完了まで1〜2週間程度です。添付情報は農地法の許可書で、法務局が畑から宅地への記載例まで公開しているので、自分で申請することもできます。土地家屋調査士に依頼する道もあり、その場合の報酬は事務所ごとの設定なので見積もりを取ってください。

まとめ──金額より先に、色を確かめる

  • 農地転用=農地を農地以外のものにすること。建物を建てなくても転用。無許可なら法律行為が無効・登記不可・3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法人は1億円以下)
  • 4条=自分で転用/5条=転用目的の売買・貸借(連署)。令和5年は件数の約8割が5条
  • 許可権者は都道府県知事(指定市町村の長)。市街化区域だけは農業委員会への届出で転用可
  • 農地区分は5種類。農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地は原則不許可。第2種は条件付き、第3種は原則許可
  • 費用は申請手数料は原則なし・地目変更登記の登録免許税ゼロ。主役は行政書士報酬(5条は5万〜15万円が約7割)と造成費(擁壁は1㎡9万円台)
  • 期間は宇都宮市42日/北海道70日+月次の締切。青地なら農振除外で約6か月・受付は年4回(豊田市の例)が上乗せ
  • 落ちる型は転用の確実性なし・資力不足・被害防除不十分・目的が曖昧の4つ。「造成だけ」は不許可
  • 青地かどうかは登記簿に書いていない。地番を握ったら、農政担当課・農業委員会・都市計画担当課の3か所を回る

土地には、地図の上でだけ見える色がある。青い地に、宅地への道はない。

その色は、電話1本と半日の外出で確かめられる。契約書に判を押す前に、必ず確かめてほしい。順番さえ守れば、農地転用は特別に難しい手続きではない。そこから先は、マイペースでいい。

📚 参考・出典(19件・すべて2026年9月11日確認)

法令の条文はe-Gov法令検索の現行条文、制度の骨格は農林水産省の公表資料、報酬は日本行政書士会連合会の統計、手続きの締切・標準処理期間は各自治体が公表しているものを確認した。許可基準の運用と処理期間は市町村・都道府県ごとに異なる。本記事の整理は一般的なもので、個別の許可の可否や金額を保証するものではない。

※農地区分の判定、申請の締切日、標準処理期間、農振除外の受付時期は市町村・都道府県ごとに異なります。全国一律の基準はないので、必ず該当の農業委員会と農業振興地域の担当課でご確認ください。造成費の金額表は財産評価のための基準であり、実際の工事費は現地の条件によって大きく変わります。

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この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

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