農ある移住

農地付き空き家の探し方|空き家バンクで畑付きの家を見つける手順


農地付き空き家の探し方|空き家バンクで畑付きの家を見つける手順
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

牛飼い君
定年したら、畑の付いた古い家に住みたいんです。「農地付き空き家」って、どこで探せばいいんですか?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
探す場所はもう用意されているんだ。全国から一気に検索できるサイトが2つある。ただね、探し方より先に知っておいてほしい落とし穴が一つある。そこから話そう。

庭先に畑がある家で、自分の食べる分くらいは作りたい」 「不動産サイトで探しても、畑付きの物件なんて出てこない

畑付きの家——いわゆる農地付き空き家を探し始めた人が、まずぶつかるのがこれだ。普通の不動産ポータルで「畑付き」と検索しても、ほとんど出てこない。理由は単純で、農地付き空き家の情報は、市町村の空き家バンクに集まっているからだ。

私は飼料と資材の代理店営業を13年やり、数百軒の農家の庭先を回ってきた。その中で、離農して空いた家と、耕す人のいなくなった畑が並んで残っている風景を、何度も見てきた。買いたい人と、手放したい人。その両方がいるのに出会えていない——農地付き空き家の取組は、そこをつなぐ仕組みだ。

この記事では、どこで探すかと、どの順番で動くかを、国土交通省・農林水産省の一次資料で裏を取りながら整理する。煽らない。手順だけ渡す。

先に結論。農地付き空き家の探し方4原則

① 探す場所は「空き家バンク」。全国版が2サイトあり、どちらも「農地付き」で絞り込める。参加自治体が違うので両方見る。

② 家は買えても、農地は「許可」がいる。農地部分の権利移動には農業委員会の許可(農地法3条)が必要。ここが普通の空き家との決定的な違い。

③ 2023年4月に面積の壁は消えた。下限面積要件が廃止され、小さな畑でも取得できるようになった。かつての「1アール特例」を探す必要はもうない。

④ 契約より先に、農業委員会へ一本入れる。許可が下りなければ農地の権利は動かない。順番を間違えると止まる。

⚠️ 本記事は2026年8月時点で公開されている公的資料をもとにした一般的な整理です。制度の運用・締切・要件は市町村ごとに異なり、変更されることもあります。実際の手続きは、必ず物件所在地の市町村・農業委員会でご確認ください

この記事でわかること

  • 農地付き空き家と、普通の空き家の決定的な違い
  • 2023年4月の農地法改正で、何が簡単になり、何が残ったのか
  • 全国版空き家・空き地バンク2サイトの使い分けと、絞り込み方
  • 自治体の空き家バンクを直接見るべき理由
  • 契約前に「農地の素性」を無料で調べる方法
  • 現地で見るべきは家より畑と地域——水利・共同作業・獣害
  • 農業委員会に相談する順番と、時間の読み方

農地付き空き家とは何か──普通の空き家と違うのは一点だけ

農地付き空き家とは、その名のとおり空き家と、それに付随する農地をセットで売る(貸す)物件のことだ。国土交通省は2018年(平成30年)3月に「『農地付き空き家』の手引き」を作成し、2024年(令和6年)10月に改訂している。移住促進と、空き家・遊休農地の対策を同時に狙う取組として、自治体に広めているものだ。

普通の空き家との違いは、たった一点。家(宅地)は売買契約と登記で権利が動くが、農地は農業委員会の許可がなければ動かないということだ。

普通の空き家農地付き空き家
家・宅地の部分契約と登記で完結同じ(契約と登記で完結)
畑・田の部分農地法3条の許可が必要
許可を出すのは市町村の農業委員会
どこで探すか不動産ポータル主に空き家バンク
買い手に問われること資金資金+自分で耕す見込み

つまり、農地付き空き家は「不動産の話」と「農地制度の話」が同時に走る。この二本立てを知らずに家だけ見て回ると、いい物件を見つけてから足が止まる。

牛飼い君
庭先の家庭菜園くらいの広さでも、いちいち許可がいるんですか?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そこは実は例外があるんだ。ただし判断するのはあなたじゃなくて農業委員会。だから「たぶん大丈夫」で進めないほうがいい。

農林水産省の通知(平成16年3月18日付 経営局長通知)では、住宅の敷地に付随する土地で作物を栽培していても、ごく小面積で、住宅の敷地から独立して取引の対象となり得ないと認められる場合は、農地法上の「農地」に該当しないとされている。この場合、敷地と一体で売買するなら許可は不要だ。

ただし国交省の手引きにもはっきり書かれているとおり、その土地が農地に当たるかどうかを判断するのは農業委員会だ。登記の地目が「畑」なら、まず農地として扱われると考えておくのが安全になる。

2023年4月に何が変わったか──「1アール特例」はもう要らない

農地付き空き家を調べていると、「下限面積を1アールに緩和している自治体」という情報に必ず出会う。これは古い情報ではないが、今はもう意味を持たない。順を追って整理する。

かつて農地を取得するには、取得後の農地面積の合計が都府県で50a(5,000㎡)、北海道で2ha以上になることが許可要件の一つだった。これが下限面積要件だ。空き家に付いてくる畑は数十坪〜数アールが普通だから、この要件を満たせるはずがない。

そこで農地法施行規則には、農業委員会が地域の実情に応じてもっと小さい面積を「別段の面積」として定められる特例があった。島根県雲南市、兵庫県宍粟市、佐用町といった市町村は、この特例を使い、空き家バンクに登録された空き家に付随する農地について下限面積を1アールまで緩和する運用を行ってきた。宍粟市の場合、地番ごとに別段面積1a区域を設定し、購入する空き家に住所を置くこと(生活の拠点を移すこと)を条件にしていた。

そして2023年(令和5年)4月1日、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律の施行により、下限面積要件そのものが廃止された。特例を待つ必要がなくなったわけだ。実際、秋田市のように2023年7月に「空き家に付随した農地」の別段面積を廃止したと公表している自治体もある。制度が上位で解決されたので、自治体側の特例が役目を終えた形になる。

消えたもの/残ったもの

消えた:下限面積要件(都府県50a・北海道2ha)と、その緩和のための「別段の面積」。面積を理由に断られることはなくなった。

残った:①農地の全てを効率的に利用すること ②必要な農作業に常時従事すること ③周辺の農地利用に支障がないこと。この3つは改正で変更されていない。

言い方を変えると、「小さいから買えない」はなくなり、「耕す気がないなら持たせない」は残った。制度の考え方は一貫している。この農地法まわりのしくみは、母艦記事で詳しくほどいている。探し始める前に、一度は目を通しておいてほしい。

探し方①──全国版空き家・空き地バンク(2サイト)

ここから実務だ。まずは全国を横断して探す。

国土交通省は、自治体ごとにバラバラだった空き家バンクを横断検索できるよう「全国版空き家・空き地バンク」を構築した。公募で選ばれた2事業者が2017年(平成29年)10月に試行運用を始め、2018年(平成30年)4月から本格運用している。国交省の資料によれば、2026年(令和8年)7月末時点で1,148自治体が参加し、うち744自治体が実際に物件を掲載中。累計で約26,000件が成約したとされている。

運営は次の2社で、どちらも「農地付き」で絞り込めるのが重要なポイントだ。

アットホーム 空き家バンクLIFULL HOME’S 空き家バンク
URLakiya-athome.jphomes.co.jp/akiyabank/
掲載物件数11,558件8,538件
参画自治体909788
農地付きの絞り込み特集「農地付き物件特集暮らしのテーマ「農地付きの空き家
ほかに使える切り口100万円以下、古民家、田舎暮らし、島暮らし、温泉地域農のある暮らし、自然に囲まれた暮らし、暖かい場所、涼しい場所、島暮らし

※物件数・自治体数は2026年8月25日に各サイトで確認した数値。日々変動する。

ここで一番言いたいのはこれだ。2サイトは参加している自治体が違う。909と788という数字が示すとおり、片方にしか出ていない市町村がある。面倒でも両方を見る。これだけで候補の母数が変わる。

使い方のコツを3つ。

  1. 先に「農地付き」で絞ってから、地域を広げる。地域から入ると件数が多すぎて疲れる。農地付きは全体からすればごく一部なので、条件から入るほうが早い。
  2. 物件番号とURLを控えておく。空き家バンクの掲載は入れ替わりが激しい。気になったらその日のうちにメモする。
  3. 「支援制度」の条件も併せて見る。LIFULL側は家賃補助・住宅購入補助・リフォーム補助・移住費用補助といった支援制度から自治体を探せる。畑より家の傷みのほうが高くつくことは珍しくない。

探し方②──狙う市町村が決まったら、自治体のバンクを直接見る

全国版は入口として優秀だが、万能ではない。前述のとおり参加1,148自治体のうち、実際に掲載しているのは744自治体。参加していても物件を上げていない自治体があるということだ。さらに、農地付きかどうかの表示は自治体の入力に左右される。国交省の手引き自身が、自治体向けの課題として「空き家バンクの現状からみると、農地付きであるか否かの情報が分かりにくい場合も多い」と書いている。

だから、行きたい地域が2〜3か所に絞れたら、その市町村の空き家バンクを直接見る。検索窓に「◯◯市 空き家バンク」「◯◯町 農地付き空き家」と入れるだけでいい。全国版に載っていない物件が、自治体サイトには載っていることがある。

空き家バンクを使うときの流れは、手引きに示された取組フローがそのまま実務になる。

  1. バンクの利用登録(買いたい人・借りたい人として登録する。ここを飛ばすと詳細情報がもらえない自治体が多い)
  2. 登録情報の提供(希望を伝えると、条件に合う物件を個別に案内してもらえる)
  3. 現地確認(自治体職員や定住支援の担当が付き添う地域もある)
  4. 売買・賃貸借の交渉と契約(当事者間、または宅地建物取引業者の媒介)
  5. 契約後、農地の権利移動の手続き(農業委員会へ3条許可の申請)

ここで押さえておきたいのは、空き家バンクは自治体がやっている「情報の掲示板」であって、自治体が仲介するわけではないということだ。値段の交渉も契約も、当事者同士か宅建業者が入って進める。役所が値引きしてくれるわけでも、品質を保証してくれるわけでもない。

先行している自治体の実績を見ておくと、規模感がつかめる。

自治体農地付き空き家の取組成約実績
島根県雲南市2012年(平成24年)11月開始。全国の市町村に先駆けて着手48件(2023年10月時点)
兵庫県宍粟市2016年(平成28年)開始59件(2023年12月時点)

10年前後で数十件。年に数件という世界だ。焦って飛びつく必要はないが、逆に「探し続けていれば出会える」件数でもある。手引きによれば、両市とも購入者の代表的な属性はセカンドライフに入ったミドル〜シニア世代。あなたと同じ動機の人が、すでに何十人も先を歩いている。

探し方③──契約前に「農地の素性」を無料で調べる

物件が見つかったら、家の写真を眺める前にやってほしいことがある。付いてくる農地が、どういう土地なのかを調べることだ。

農林水産省の「eMAFF農地ナビ」(旧・全国農地ナビ)を使えば、誰でも無料・登録不要で全国の農地台帳・農地地図を閲覧できる。地図上に農地の形が重なって表示され、地番・地目・面積といった公表情報が確認できる。遊休農地の状況や、農業振興地域かどうかの区分が分かる場合もある。

見るポイントはこの4つ。

  • 面積:写真の印象と実際の広さは、たいてい食い違う。1a=100㎡=約30坪。5aあれば、二人暮らしの野菜は十分すぎるほど作れる。
  • 形と接道:軽トラが横付けできるか。農道が細い、上り下りがきついといった条件は、年齢を重ねるほど効いてくる。
  • 家からの距離:「農地付き」といっても、家の隣とは限らない。離れた場所の畑がセットになっていることもある。
  • 周りの農地の状態:周囲がきれいに耕されているか、荒れているか。周りが荒れている土地は、草も虫も獣も集まりやすい。
牛飼い君
ネットで下調べできるのはありがたいな。あとは現地に行けば安心ですね。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そこなんだ。現地で見るべきは家じゃない。畑と、地域の決まり事なんだよ。ここを飛ばした人が一番あとで困る。

現地確認の落とし穴──見るのは家より「畑と地域」

内覧は誰でも家を見る。水回り、雨漏り、床の傾き。もちろん大事だ。だが農地付き空き家で後から効いてくるのは、畑と、その土地の決まり事のほうだ。現場を回ってきた者として、ここは強めに言っておきたい。

① 何年、耕していない畑か

数年放置された畑は、見た目は「ただの草地」でも、根が張り、灌木が入り始めていることがある。それを畑に戻すのは、草を刈って終わりではない。「今すぐ作れる畑」なのか、「まず戻す作業から始まる畑」なのかは、値段以上に効いてくる差だ。売主か地元の人に「最後に何を作ったのは、いつですか」と聞くのが一番早い。

② 水はどこから来るか(水利)

これが移住者の見落としナンバーワンだ。田畑の水は、たいてい地域の水利組合や土地改良区が管理する用水から来る。使うなら組合への参加や負担金が発生することがあり、水を回す順番や、水路の清掃当番といった決まり事も付いてくる。

国交省の手引きは、自治体向けのポイントとして「水利組合への参加や負担金等の地域での決まり事は、あらかじめきちんと情報提供」と明記している。裏を返せば、こちらから聞かないと分からないまま契約に進んでしまうということだ。必ず聞く。

③ 地域の共同作業と、出不足金

移住者の受け入れに慣れた自治体は、地域の決まり事を紙にまとめて渡している。手引きに載っている兵庫県佐用町の「自治会からのお知らせ事」のひな形には、こんな項目が並ぶ。

  • 自治会費(月額または年額)。町の説明によれば、集落会費やお寺・神社に関する負担は自治会によって内容が異なる
  • 役員(自治会長・副会長・会計・宮総代・隣保長ほか)の選出方法と報酬の有無
  • 会議(寄合)の頻度
  • 共同作業:草刈、溝掃除、河川清掃、集会所の清掃、生活道路や農道の清掃、鹿柵フェンスの維持管理作業、ゴミ集積所の清掃
  • 共同作業を欠席したときの出不足金(1回◯円)の有無
  • 祭り(春夏秋冬)と、それに伴う作業・負担経費

これは脅しではない。田舎で暮らすとはこういうことだ、と正直に開示している良心的な資料だ。年に数回の草刈りと溝掃除を「面倒」と取るか「顔合わせの機会」と取るかで、その土地での5年後がまったく変わる。ちなみに共同作業に参加するなら、自分の刈払機(草刈機)は早めに一台用意しておきたい道具の筆頭だ。初めてなら、エンジン式より扱いやすい充電式から入るのが現実的だと思う。

Amazonで「充電式 草刈機」を見る 地域になじむ話は、こちらにまとめている。

④ 獣害は「あるかないか」ではなく「どう防ぐか」

農林水産省の集計では、2023年度(令和5年度)の野生鳥獣による農作物被害は全国で164億円、被害面積は約4万ha。内訳はシカ70億円、イノシシ36億円、クマ7億円などとなっている。中山間地の畑で「獣が出るかどうか」を心配しても意味がない。出る前提で、柵をどうするかを考えるのが現実的だ。物件の畑に既存の柵があるか、地域で共同の柵を維持しているか(前述の鹿柵フェンス)は、内覧時に必ず確認したい。

⑤ 家の傷みは、畑より高くつくことがある

総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2千戸、空き家率13.8%でいずれも過去最多・最高。うち賃貸・売却用や別荘など二次的住宅を除く空き家は385万6千戸だ。数は多い。だが数が多いということは、長く放置された家も多いということでもある。

物件価格が安くても、屋根・水回り・浄化槽・耐震で数百万円かかることは珍しくない。だからこそ、前述したリフォーム補助や住宅取得補助といった自治体の支援制度を、物件と同時に調べる価値がある。「家の総額=物件価格+改修費-補助金」で比べる。ここを一つの数字にしてから決めたい。

買う前に農業委員会へ──順番と、時間の読み方

最後が一番大事な話だ。

手引きの取組フローでは、農地の権利取得の手続きは契約の後(フローの⑪⑫)に置かれている。書類上の順番はそのとおりだ。だが実務として強く勧めたいのは、気に入った物件が出てきた段階で、先に農業委員会へ相談の一本を入れておくことだ。理由は3つある。

理由1:許可がなければ、農地の権利は動かないから。 農地法3条の許可は、次の3要件をすべて満たしたときに出る。①農地の全てを効率的に利用すること ②必要な農作業に常時従事すること ③周辺の農地利用に支障がないこと。「買って放置」「たまに来て草を刈るだけ」では、要件を満たすと判断されにくい。自分の使い方が要件に届くかどうかは、その地域の農業委員会に聞くのが最短だ。

理由2:スケジュールが読めるようになるから。 3条許可は、多くの市町村で毎月1回の農業委員会総会で審議される。申請の締切日は自治体ごとに決まっており、締切を1日過ぎれば審議は翌月になる。標準処理期間(審査にかかる日数の目安)も自治体ごとに定められていて、それぞれ異なる。「引っ越しは何月から」を逆算するなら、この日程を先に握っておく必要がある

理由3:そもそも農地に当たるのか、を確定できるから。 前述のとおり、ごく小面積で敷地から独立して取引の対象になり得ない土地は農地に該当しない。その判断をするのは農業委員会だ。「許可が要る話なのか、要らない話なのか」が最初に分かれば、あとの段取りが一気に軽くなる。

相談で聞かれることは、だいたい決まっている。誰が耕すのか(世帯の誰か)、何を作るのか、どのくらいの頻度で通う(住む)のか、機械や道具はどうするのか。難しい営農計画を作る必要はない。正直に、具体的に答えられれば十分だ。宍粟市の事例では、農地付き空き家は規模が小さいことから、通常は購入者との面接までは行っていなかったとされている。身構えすぎなくていい。

そしてもう一つ。いきなり買わず、借りるところから始める選択肢も忘れないでほしい。賃借にも同じ3条許可が要るが、合わなかったときに引き返しやすい。空き家バンクには賃貸物件も出ている(アットホーム側では「借りる」が1,326件掲載されていた)。

さんぼう君の現場メモ:農地は買えても、水と道は買えない

飼料の代理店営業で13年、農家の庭先を回ってきて、はっきり分かったことがある。農業を続けられるかどうかを決めるのは、土の良し悪しより、水と道と人だということだ。

どんなにいい畑でも、水を回してもらえなければ作れない。軽トラが入らない畑は、収穫のたびに人力になる。そして水も道も、たいてい地域みんなで維持しているものだ。だから移住者が最初にやるべきは、いい土地を探すことよりも、その地域の共同作業に一度顔を出してみることだったりする。

私の実家も和牛の繁殖と野菜をやっているが、親が畑に出るのは収穫のためだけじゃない。道で会う、寄合で話す、順番で溝を掃除する——その積み重ねが、「困ったときに助けてもらえる関係」になっている。農地付き空き家を買うということは、畑と家だけでなく、その関係の輪に入れてもらうということだ。

だから焦らなくていい。年に数件しか動かない世界だ。いい物件を逃すより、合わない地域に根を下ろすほうが、はるかに取り返しがつかない。何度か通って、季節を変えて見て、それから決めても遅くない。

沖縄で探すなら

移住先として沖縄を考えているなら、農地の制度は全国共通だが、暮らしの実務(住居・車・生活費・台風対策・地域との距離感)は本土とかなり違う。そちらは姉妹サイトの沖縄移住ライフに、現地目線でまとめている。農地と就農の段取りはこの農場のさんぼう君で、暮らしの段取りはあちらで——と使い分けてもらえたら嬉しい。

よくある質問(FAQ)

Q. 農地付き空き家は、誰でも買えますか?

家(宅地)部分は通常の不動産取引ですが、農地部分は農業委員会の許可(農地法3条)が必要です。許可には、農地の全てを効率的に利用すること、必要な農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障がないこと、という要件があります。「買って放置」は想定されていません。

Q. 家庭菜園くらいの広さでも許可がいりますか?

農地かどうかは登記の地目ではなく現況で判断されます。地目が田・畑なら、まず許可が要ると考えておくのが安全です。ただし、住宅の敷地に付随する土地で、ごく小面積かつ敷地から独立して取引の対象になり得ないと認められる場合は、農地法上の農地に該当しないとされています(平成16年3月18日付 農林水産省経営局長通知)。該当するかどうかを判断するのは農業委員会なので、自己判断せず確認してください。

Q. 「下限面積1アールに緩和」という自治体情報を見つけました。まだ有効ですか?

2023年(令和5年)4月1日に下限面積要件そのものが廃止されたため、緩和の特例を探す必要はもうありません。秋田市のように、特例(別段面積)の廃止を公表している自治体もあります。古いページが残っていることがあるので、日付を確認してください。

Q. 空き家バンクの物件は、役所が仲介してくれるのですか?

空き家バンクは自治体が運営する情報提供の仕組みで、売買・賃貸借の交渉と契約は当事者間、または宅地建物取引業者の媒介で行うのが基本です。多くの自治体では利用登録をしないと詳細情報が得られないので、まず登録から始めてください。

Q. 移住しないと農地付き空き家は買えませんか?

制度上、必ず移住が条件というわけではありません。ただし「必要な農作業に常時従事する」という要件がある以上、遠方から年に数回通うだけの使い方では許可が難しい場合があります。実際、かつて特例を運用していた自治体では、購入した空き家に住所を置き生活の拠点とすることを条件としていた例もあります。自分の想定する通い方で要件を満たせるかは、農業委員会に相談を

Q. 探し始めてから住むまで、どのくらいかかりますか?

物件との出会いが最大の変数なので一概には言えません。ただし手続き側の目安として、3条許可は毎月1回の農業委員会総会で審議され、申請の締切日と標準処理期間は自治体ごとに決まっています。契約前に締切カレンダーを確認しておくと、引っ越し時期の見通しが立てやすくなります。

まとめ──探す前に、順番を握る

  • 農地付き空き家は空き家バンクで探す。全国版は2サイトあり、どちらも「農地付き」で絞り込める。参加自治体が違うので両方見る
  • 地域が絞れたら、その市町村のバンクを直接見る。全国版に出ていない物件がある
  • 2023年4月に下限面積要件は廃止。面積の壁は消えたが、効率利用・常時従事・地域調和の3要件は残っている
  • 現地で見るべきは家より畑と地域。何年耕していないか、水はどこから来るか、共同作業と出不足金、獣害対策
  • 気に入った物件が出たら、契約より先に農業委員会へ一本。許可がなければ農地の権利は動かない

家には畑が付いてくる。そして畑には、掟と水と草が付いてくる。それを面倒と思わず「そういうものだ」と受け止められるなら、農地付き空き家は、都会では手の届かない暮らしを現実的な値段で叶えてくれる選択肢だ。

まずは今夜、全国版空き家バンクの2サイトで「農地付き」にチェックを入れてみてほしい。そこから先は、マイペースでいい。

参考・出典

すべて2026年8月25日にアクセスして内容を確認した。

※3条許可の申請締切・標準処理期間は市町村ごとに異なります。全国一律の基準はないので、必ず該当の農業委員会で確認してください。

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この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

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