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収支内訳書(農業所得用)の書き方|白色申告の農家が迷う欄を1面・2面の順に解説


収支内訳書(農業所得用)の書き方|白色申告の農家が迷う欄を1面・2面の順に解説
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

「親から田んぼを継いだら、税務署から確定申告の案内が届いた。収支内訳書って何を書けばいいのか分からない」 「勤めながら野菜を出荷している。白色申告の用紙を開いたら、知らない欄だらけで手が止まった」

白色申告の農家が最初にぶつかるのが、この「収支内訳書(農業所得用)」である。一般用の収支内訳書とは別物で、家事消費、農産物の棚卸高、果樹・牛馬等の育成費用といった農業にしかない欄が並ぶ。

私は飼料・畜産資材の代理店営業として、長年農家を回ってきた。確定申告の時期、農家から「どこから書けばいいのか」と聞かれることは多い。手が止まる理由はたいてい同じで、「どの欄から埋めればいいか」を知らないことだ。

牛飼い君
収支内訳書って、上から順番に書いていけばいいんでしょ?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そこが落とし穴なんだ。1ページ目の売上や棚卸の欄は、2ページ目の明細の合計を写す作りになっている。だから2ページ目から書くのが正解だよ。
結論:収支内訳書(農業所得用)は、白色申告の農家が確定申告書に添えて出す「1年分の農業の収支の明細」。
入手先は国税庁サイトの「確定申告書等の様式・手引き等」(PDF・2ページ)。いちばん楽なのは国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、入力すれば計算まで自動でやってくれる。
期限は、令和8年分(2026年分)なら2027年2月16日(火)〜3月15日(月)。
書く順番は「2ページ目(収入の明細・減価償却・育成費用)→1ページ目(経費・所得)」。白色でも帳簿をつけて保存する義務がある。

この記事でわかること:

  • 収支内訳書(農業所得用)を誰が・どこで・いつまでに出すのか
  • 2ページ目の収入金額の明細・減価償却費・育成費用の書き方
  • 1ページ目の経費20科目に何を入れるか(国税庁の具体例つき)
  • 家事消費・共済金・棚卸・販売用の家畜など農家がつまずく欄
  • 白色でも必要な帳簿の保存期間
  • 申告しないとどうなるか、いくらから申告が必要か

注:欄名・番号・計算式は、国税庁「令和7年分 収支内訳書(農業所得用)の書き方」と様式(令和二年分以降用)を2026年9月24日に確認して写した。同日時点で令和8年分の様式・手引きのページはまだ公開されていない。令和8年分を書くときは、公開後の最新版で必ず確かめてほしい。個別の判断は税務署・税理士へ。

収支内訳書(農業所得用)とは:誰が・どこで・いつまでに

誰が出すか。農業で事業所得がある人のうち、青色申告の承認を受けていない人(白色申告の人)だ。国税庁のタックスアンサー(No.2080)には、確定申告書を提出する場合は「総収入金額や必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)の添付が必要になります。」とある。青色の人は同じ役割を「青色申告決算書(農業所得用)」が担う。青色の書き方は「農業の確定申告のやり方|青色申告65万円控除の条件と手順」にまとめてある。

どこで手に入れるか。ルートは3つある。

入手ルート中身向いている人
国税庁「確定申告書等作成コーナー」画面の案内に沿って入力すると収支内訳書と申告書ができ、e-Taxで送信もできるほぼ全員。計算を間違えたくない人
国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」収支内訳書(農業所得用)の様式PDF(2ページ)と「書き方」PDF紙に手書きしたい人
税務署の窓口紙の用紙印刷環境がない人

国税庁の書き方PDFの表紙には「スマホで収支内訳書が作れます!!」とあり、作成コーナーについて「自動計算だから計算誤りがありません」と案内している。手書きする場合は、様式の記載例に「この収支内訳書は機械で読み取りますので、黒のボールペンで書いてください。」との注意書きがある。

いつまでか。所得税の確定申告の期間は、原則として「その年の翌年2月16日から3月15日まで」(国税庁 No.2020)。令和8年分(2026年1〜12月の所得)なら2027年2月16日(火)から3月15日(月)までだ(曜日は暦で確認)。

書く順番は「2ページ目→1ページ目」

様式は2ページ構成で、それぞれこういう役割になっている。

ページ主な欄
1ページ目収入金額(①〜⑦)、経費(⑧〜⑭)、所得金額(⑮〜⑰)、雇人費の内訳、小作料・賃借料の内訳、事業専従者の氏名等
2ページ目収入金額の明細、減価償却費の計算、果樹・牛馬等の育成費用の計算、本年中における特殊事情

国税庁の書き方では、1ページ目の①販売金額・②家事消費事業消費金額・③雑収入・⑤⑥農産物の棚卸高は、どれも「収支内訳書2ページの『収入金額の明細』欄」の金額を記入すると指示されている。⑩減価償却費も2ページ目の「減価償却費の計算」の合計、㋶育成費用も2ページ目の「果樹・牛馬等の育成費用の計算」から写す。

つまり1ページ目の大きな数字は、ほとんどが2ページ目の答えの写しである。上から書き始めると、途中で2ページ目の計算に戻ることになる。

なお書き方の冒頭には「収支内訳書の太枠の箇所に該当する金額がある方は、必ず記入してください。」とある。

2ページ目①:収入金額の明細

作物・家畜ごとに1行ずつ書く欄だ。列は次のとおり。

列書くこと
農産物等の種類品名等収穫・販売した作物の名称。温室やビニールハウス等で収穫したものは「特殊施設」欄に書く
作付面積(飼育頭羽数)田・畑はアール、特殊施設は平方メートル、家畜は頭羽数(記載例の単位)
販売金額本年中の販売金額
家事消費・事業消費金額自家用に食べた分、雇人への現物支給分など
農産物の棚卸高(期首・期末)数量と金額

行は「田」「畑」(小計Ⓐ)、「特殊施設」(小計Ⓑ)、「畜産物その他」(小計Ⓒ)に分かれる。合計(Ⓐ+Ⓑ+Ⓒ)の販売金額が1ページ目の①、家事消費等が②、農産物計(Ⓐ+Ⓑ)の期首・期末の棚卸高が⑤・⑥になる。

代金をまだもらっていなくても、その年の売上

書き方にはこうある。

販売後、まだ実際に代金を受け取っていない場合でも本年中に販売したものについては、全て本年分の販売金額になります。

12月に出荷して入金が1月、という取引は珍しくない。入金日ではなく販売日で年を切る。通帳の入金だけを拾って売上にすると、ここがずれる。

自家用の米・野菜は「家事消費」として収入になる

書き方の定義は「農作物を家事及び事業(雇人費の現物支給など)のために消費した場合に、収穫時の生産者販売価額により計算して記入します。」。

売っていない米や野菜でも、家で食べた分は収入に数える。国税庁の記載例でも、販売金額が空欄の「自家用野菜」の行に家事消費60,000円が書き込まれている。兼業で「うちは自家用が半分」という家ほど、この欄を空欄のまま出しがちだ。

農産物の棚卸高は「収穫時の生産者販売価額」

12月31日時点で売れ残っている米などは期末棚卸高に書く。評価は「収穫時の生産者販売価額により計算して記入します。」で、「米麦等の穀物以外の農産物で数量が僅かなものについては、棚卸しを省略しても差し支えありません。」とされている。

計算式は1ページ目の⑦で「④−⑤+⑥」。期首の在庫は引き、期末の在庫は足す。去年の米を今年売った分が二重に収入にならないための仕組みだ。

共済金・交付金・助成金は「雑収入の内訳」へ

雑収入の内訳(区分と金額)の合計が1ページ目の③になる。書き方の説明は次のとおり。

受取共済金、出荷奨励金、野菜・鶏卵などの価格差補填金、農作業受託料、事業分量分配金などの名称と金額を記入します。そのほか国や地方公共団体から支給された助成金等で課税対象となるものがある場合にも、当該助成金等の金額を含めて、この欄に記入します。

記載例には「水稲共済金」「農作業受託料」が並んでいる。台風の被害で共済金が入った年、近所の田んぼを刈って受託料をもらった年は、ここを忘れない。補助金・交付金のうちどれが課税対象になるかは制度ごとに違うので、交付決定通知を持って税務署で確認するのが確実だ。補助金の受け取り方そのものは「農業・畜産の補助金申請の流れ5ステップ」で扱っている。

2ページ目②:減価償却費の計算(トラクター・軽トラ・牛)

10万円以上の機械や建物は、買った年に全額を経費にできず、耐用年数に分けて経費にする。その計算表がここで、合計が1ページ目の⑩減価償却費になる。

列の並びは、減価償却資産の名称等 → 面積又は数量 → 取得(成熟)年月 → ㋑取得価額(償却保証額) → ㋺償却の基礎になる金額 → 償却方法 → 耐用年数 → ㋩償却率又は改定償却率 → ㋥本年中の償却期間 → ㋭本年分の普通償却費(㋺×㋩×㋥) → ㋬特別償却費 → ㋣本年分の償却費合計(㋭+㋬) → ㋠事業専用割合 → ㋷本年分の必要経費算入額(㋣×㋠) → ㋦未償却残高(期末残高) → 摘要。(この㋑〜㋦は2ページ目の表の中だけの記号で、1ページ目の経費の㋑租税公課などとは別物)

耐用年数は手引きの表で引く

書き方7ページの「主な減価償却資産の耐用年数表」から、農家がよく使うものを抜き出す。

資産手引きの区分耐用年数
耕うん機・トラクターなどの農業用の機械機械・装置「農業用設備」7年(記載例の耕うん機も7年)
軽トラなどの車両車両・運搬具「自動車」軽トラ(660cc以下)は「小型車」で4年。660ccを超える貨物自動車はダンプ式4年・その他5年
繁殖用の牛(種付証明書等のあるもの)生物「牛」役肉用牛6年、乳用牛4年
木造の倉庫・作業場建物15年
果樹棚・牧さく(主として木造)構築物「農林業用のもの」5年

この表にないものは、国税庁タックスアンサー「減価償却のあらまし」を見るよう注記されている。

償却方法を届け出ていなければ「定額法」

書き方には、平成19年4月1日以後に取得したものは「届け出ていない方は、定額法になります。」とある。白色で届出を出した覚えがない農家は、ほぼこちらだ。定額法の計算は次の式になる。

取得価額 × 定額法の償却率 × 本年中に事業に使用していた月数 ÷ 12

たとえば(数字は説明用の仮定)、トラクターを300万円で4月に買って使い始めたなら、耐用年数7年の定額法償却率は0.143(手引き8ページの償却率表)なので、300万円×0.143×9/12=321,750円がその年の償却費になる。月の途中で買った場合は、その月を1か月として数える。

10万円未満は「農具費」、10万〜20万円未満は3年で割れる

  • 取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満のもの(少額な減価償却資産)は、減価償却せずに使った年の経費。1ページ目の㋬農具費は「少額な減価償却資産(6ページ参照)に該当するものに限ります。」とされている
  • 10万円以上20万円未満のものは、3年間で3分の1ずつ経費にできる(一括償却資産)。この場合㋩の欄に「1/3」と書く

軽トラを家の買い物にも使うなら、㋠事業専用割合で按分する。

2ページ目③:果樹・牛馬等の育成費用の計算

果樹の苗木や、自家育成中の繁殖用の牛のように、まだ成熟していないものにかかった種苗費・肥料・飼料などは、その年の経費ではなく育成中の資産の取得価額に積み上げる。そのための表で、見出しに「(販売用の牛馬、受託した牛馬は除きます。)」とある。

欄中身
㋑前年からの繰越額前年以前から育成している果樹・牛馬等の取得費と育成費用の前年末の合計額
㋺本年中の種苗費、種付料、素畜費本年分
㋩本年中の肥料、農薬等の投下費用飼料費、肥料費、農薬費のみを育成費用としても差し支えない
㋥小計(㋺+㋩)この合計が1ページ目の㋶へ
㋭育成中の果樹等から生じた収入金額育成中の果樹から収穫した果実の収入
㋬本年に取得価額に加算する金額(㋥−㋭)
㋣本年中に成熟したものの取得価額成熟した分は減価償却資産へ移る
㋠翌年への繰越額(㋑+㋬−㋣)

1ページ目では、肥料費や飼料費はいったん全額をそれぞれの科目に書き、㋶「経費から差し引く果樹牛馬等の育成費用」でまとめて差し引く組み立てになっている。

1ページ目:経費の科目と書くもの

国税庁の書き方「必要経費の各科目の具体例等」をそのまま表にした。

番号科目国税庁の具体例
⑧雇人費常雇・臨時雇人などの労賃及び賄費
⑨小作料・賃借料農地の賃借料、農地以外の土地・建物の賃借料、賃耕料、農機具の賃借料、農業協同組合などの共同施設利用料
⑩減価償却費建物、農機具、車両、搾乳牛などの償却費(2ページ目から)
⑪貸倒金売掛金などの貸倒損失
⑫利子割引料事業用資金の借入金の利子や受取手形の割引料など
㋑租税公課税込経理方式による消費税等の納付税額、事業税、固定資産税(土地・建物・償却資産)、自動車税、不動産取得税など。水利費、農業協同組合費などの公課
㋺種苗費種もみ、苗類、種いもなどの購入費用(自給分は収穫した時の価額で記入)
㋩素畜費子牛、子豚、ひななどの取得費及び種付料
㋥肥料費肥料の購入費用
㋭飼料費飼料の購入費用
㋬農具費農具の購入費用(少額な減価償却資産に該当するものに限る)
㋣農薬衛生費農薬の購入費用や共同防除費
㋠諸材料費ビニール、むしろ、なわ、釘、針金などの諸材料の購入費用
㋷修繕費農機具、農用自動車、建物及び施設などの修理に要した費用
㋦動力光熱費電気料、水道料、ガス代、灯油やガソリンなどの燃料費
㋸作業用衣料費作業衣、地下たびなどの購入費用
㋾農業共済掛金水稲、果樹、家畜などに係る共済掛金
㋻荷造運賃手数料出荷の際の包装費用、運賃や出荷(荷受)機関に支払う手数料
㋕土地改良費土地改良事業の費用や客土費用
㋵〜㋞(空欄)特殊な経費があれば科目名を自分で設けて書く(記載例では「共販諸掛」)
㋡雑費農業経営上の費用で他の経費に当てはまらない経費
㋧㋤農産物以外の棚卸高(期首・期末)肥料・飼料などの資材や販売用の家畜の在庫
㋶経費から差し引く果樹牛馬等の育成費用2ページ目の育成費用の計算から

合計の出し方は様式に書いてある。⑬小計=㋑〜㋧までの計−㋤−㋶、⑭経費計=⑧〜⑫までの計+⑬。

経費にならないもの

㋑租税公課の説明には、所得税・住民税・国民健康保険税・国民年金の保険料・延滞税や加算税・罰金・交通反則金などは「必要経費になりません」と明記されている。さらに、衣料費や食費などの家事上の費用、住宅と兼用の建物のうち住宅部分の費用、水道料・電気料などのうち家事分も経費にならない。家と作業場で電気がひとつのメーターなら、使用面積や点灯時間などの「適切な基準」で按分する。

販売用の家畜は「農産物以外の棚卸高」

販売目的で飼う牛・豚・鶏などは、書き方に「取得価額に年末までの育成費用を加算して記入します。」とある。12月31日時点で牛舎にいる肥育牛や、市場に出す前の子牛が該当する。一方で、毎年同程度の規模で作付けする未収穫農産物や、毎年同程度の数量を翌年へ繰り越す農産物以外の資材は「棚卸しを省略しても差し支えありません。」とされている。

肉用牛を家畜市場などで売って免税特例を使う人は、1ページ目最下段の「⑰のうち、肉用牛について特例の適用を受ける金額」を書き、確定申告書に特例の適用を受ける旨を書いて証明書と所得計算の明細書を添付する。繁殖用の母牛は対象外など要件が細かいので、「農業の確定申告のやり方」の肉用牛の章を先に読んでほしい。

1ページ目の締め:雇人費・小作料・専従者控除・所得金額

  • 雇人費の内訳:期間雇人(年雇人)は氏名・住所、臨時雇人は作業名を書く。日数、現金・現物、合計、源泉徴収税額の列があり、計が⑧になる
  • 小作料・賃借料の内訳:支払先の住所・氏名、小作料・賃耕料・機械等の借料などの別、面積・数量、支払額
  • 事業専従者の氏名等:氏名・年齢・続柄・従事月数

⑯専従者控除は、生計を一にする配偶者や15歳以上の親族が、その年に6か月を超える期間農業に専ら従事していた場合に使える。1人につき、次のいずれか少ない金額だ(国税庁 No.2075、書き方2ページ)。

  • 配偶者なら86万円、配偶者以外の親族なら50万円
  • ⑮専従者控除前の所得金額 ÷(事業専従者の数+1)

最後に⑮=⑦−⑭、⑰所得金額=⑮−⑯。この⑰が確定申告書の農業所得の欄へつながる。

牛飼い君
母ちゃんが一年中手伝ってくれてるから、専従者控除が使えるってこと?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
要件に当てはまればね。ただし白色申告者の事業専従者になった人は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれないよ(No.2075)。どちらが得かは、作成コーナーで両方入れて比べるのが早いんだ。

白色でも帳簿は要る:記帳と保存期間

「白色は帳簿が要らない」は誤りだ。書き方3ページには次のようにある。

個人の白色申告者で事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方(所得税等の申告の必要がない方を含みます。)は、記帳と帳簿書類の保存が必要です。

記帳は「一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよい」(No.2080)。保存期間は次のとおり。

保存が必要なもの保存期間
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)5年
決算に関して作成した棚卸表その他の書類5年
請求書、納品書、送り状、領収書などの書類5年

さらにNo.2080では、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上げの帳簿を保存していなかったり記載が不十分だったりしたことが税務調査で分かった場合、加算税の割合に5パーセントまたは10パーセントが加重されることになったと説明している。

道具の分担:収支内訳書は作成コーナー、日々の帳簿は会計ソフト

ここは正直に書いておく。マネーフォワード クラウド確定申告は「収支内訳書(農業所得用)」の作成に対応していない。公式サポートに「『青色申告決算書(農業所得用)』『収支内訳書(農業所得用)』の作成には対応していません。」と明記されている(同じページで、農業所得を反映させた確定申告書は作成できるとしている)。

だから分担はこうなる。

作業使うもの
日々の売上・経費の記録、科目ごとの集計会計ソフト(または手書きの帳簿)
収支内訳書(農業所得用)と確定申告書の作成・送信国税庁の確定申告書等作成コーナー

収支内訳書が埋まらない本当の原因は、様式ではなく1年分の領収書が科目別に分かれていないことだ。日々の段階で科目別に記録しておけば、作成コーナーには合計を打ち込むだけになる。

マネーフォワード クラウド確定申告は、日々の帳簿づけと科目別の集計を任せる役として使える。1ヶ月無料のトライアルがあり、クレジットカードのご登録なしで始められる。自分の取引で、科目の集計がどこまで楽になるかを先に試しておくとよい。

経費のどこまでが認められるかの考え方は「畜産農家・自営業者の節税術。経費にできるもの一覧」も参考になる。

よくある質問

Q. 農業の確定申告をしないとどうなる?

A. 申告が必要なのに期限を過ぎると「期限後申告」になり、納める税金のほかに無申告加算税がかかりうる(国税庁 No.2024)。税務署の調査の事前通知の前に自主的に申告すれば5パーセント、事前通知の後・調査の前なら10パーセント(段階的に最高25パーセント)、調査を受けた後なら15パーセント(50万円を超える部分は20パーセント、令和5年分以降は300万円を超える部分は30パーセント)。法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、税金も全額納めているなど一定の要件を満たせば無申告加算税はかからない。気づいた時点で、できるだけ早く出すのが一番安い。

Q. 農業所得はいくらから確定申告が必要?

A. 立場で変わる。

  • 農業だけ(または農業が主)の人:所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額などを超える場合は申告が必要(No.2020)
  • 会社勤めで給与を1か所から受け、年末調整を受けている兼業農家:給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超えると申告が必要(No.1900)。ここでいうのは売上ではなく所得(収入−経費)だ
  • 年金暮らしで農業をしている人:公的年金等の収入が400万円以下で全部が源泉徴収の対象、かつ年金以外の所得金額が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要(No.2020)

いずれも、申告が不要な年でも帳簿の記帳・保存は必要(前章)。住民税の申告は市区町村で扱いが決まっているので、役場の税務担当で確認してほしい。

Q. 収支内訳書(農業所得用)はエクセルで作れる?

A. 国税庁の「確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)」ページで確認した限り、収支内訳書(農業所得用)の様式はPDFで提供されており、EXCEL形式が置かれているのは暗号資産の計算書などに限られていた(2026年9月24日確認)。自作のエクセルで集計するのは自由だが、提出する書類は作成コーナーで作るのが確実だ。作成コーナーなら合計や所得の計算も自動になる。

Q. 確定申告に必要な書類は?

A. 確定申告書と、収支内訳書(農業所得用)。肉用牛の免税特例を使うなら、その証明書と所得計算の明細書も添付する。本人確認書類など添付・提示する書類の一覧は、国税庁の「所得税及び復興特別所得税の手引き」に「申告書に添付・提示する書類」として載っている(No.2020)。作業としては、1年分の売上の記録(出荷伝票・精算書)、経費の領収書、共済金や交付金の通知、前年の収支内訳書(減価償却の未償却残高を引き継ぐため)を手元にそろえておくと、作成コーナーの入力が止まらない。

来年から青色にするなら:承認申請書の期限

白色の収支内訳書と比べると、青色申告には、2026年分までは最高65万円(2027年分からは最高75万円に見直し)の青色申告特別控除などの特典がある。切り替えるには、青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ出す(1月16日以後に新たに業務を始めた場合は開始日から2か月以内、相続で白色の親から1月16日以後に業務を引き継いだ場合は承継日から2か月以内。国税庁 No.2070)。2027年分から青色にするなら、2027年3月15日までだ。令和8年分の収支内訳書を出すついでに一緒に出せる。控除額の段階や2027年分からの改正は「農業の確定申告のやり方|青色申告65万円控除の条件と手順」、青色申告会に入るかどうかは「青色申告会って入る必要ある?」で比べている。

まとめ:2枚目から書けば、1枚目は写すだけになる

やることポイント
様式を用意する作成コーナーが確実。紙なら国税庁の様式PDF(2ページ)
2ページ目から書く収入金額の明細(販売金額・家事消費・棚卸・雑収入)、減価償却、育成費用
1ページ目の経費を埋める20前後の科目。特殊な経費は空欄に科目を作る
所得を出す⑦−⑭=⑮、⑮−⑯=⑰
期限内に出す令和8年分は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)
帳簿を保存する白色でも法定帳簿は7年、領収書などは5年

収支内訳書は難しいのではなく、欄が多いだけだ。順番さえ間違えなければ、あとは1年分の数字を正しい欄へ運ぶ作業になる。

帳簿づけと科目別の集計を先に片付けておきたいなら、マネーフォワード クラウド確定申告を1ヶ月無料で試せる(クレジットカードのご登録なし)。収支内訳書そのものは作成コーナーで作り、ソフトはその手前の集計役と割り切れば、役割がはっきりする。

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参考・出典(2026年9月24日確認)

※税制・様式は改正される。本記事は2026年9月24日時点で公表されている国税庁資料(令和7年分)にもとづく整理であり、個別の税務判断を保証するものではない。申告にあたっては必ず最新の公式情報を確認し、判断に迷う場合は所轄の税務署または税理士に相談してほしい。

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この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

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