▸ 設備・農機の話

トラクターを安く買う方法。中古市場・補助金・リース活用の賢い使い分けを現場目線で解説

— 更新:


トラクターを安く買う方法。中古市場・補助金・リース活用の賢い使い分けを現場目線で解説
📑 目次

※本記事はプロモーションを含みます。

結論:トラクターを安く買ういちばんの近道は「整備済みの中古」です。

・新車と中古では、同じ馬力でもおおむね半額前後の差があります

・補助金を使うなら、必ず交付決定を受けてから発注・契約する(先に買うと対象外になりやすい)

・5年以内で乗り換えるならリース、10年以上使うなら購入が有利になりやすい

・共同購入・自治体の独自補助・下取りの相見積もりも組み合わせると、さらに負担を減らせます

筆者は飼料・畜産資材の代理店営業として13年、北海道や鹿児島の担当エリアの農家を回ってきました。

この記事では、トラクターの相場から、中古・補助金・リース・共同購入の使い分け、中古を買うときの点検ポイントまで、順番にやさしく整理します。

牛飼い君
トラクターって、買うなら新車を選ぶしかないの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そんなことないよ。中古・補助金・リース・共同購入を組み合わせると、初期費用をかなり抑えられる場合があるんだ。

トラクターの購入価格相場

まず、相場の目安を整理しておきます。

馬力用途新車相場中古相場(状態良)
20馬力前後小規模・園芸200〜350万円80〜150万円
30〜40馬力中規模畜産・繁殖農家350〜600万円150〜300万円
50〜70馬力肥育・大規模600〜900万円250〜450万円
80馬力以上大規模・コントラクター900万円〜400万円〜

新車と中古で、ざっくり半額前後の差があります。

これが「安く買う」ためのいちばん大きなポイントです。

なお、この相場は2020年代前半の目安で、新車価格は半導体不足や円安の影響でじわじわ上がっています。

一方、高齢の農家の引退にともなって中古が出回る流れもあり、状態の良い中古に出会える機会はあります。

安く買う5つの方法

1. 中古をうまく使う

いちばん大きな節約になるのは、やはり中古です。

ただし中古には「掘り出し物」も「ハズレ」も混ざっているので、見極めが必要です。

中古の主な買い方:

  • 農機具中古販売店 ── 整備済みで保証あり。安心だが価格は高め。
  • JAの中古機械市 ── 各地で開催。実機を確認できる。
  • 農家からの直接買取 ── 引退する農家からの譲渡。情報網が必要。
  • ネットオークション(ヤフオク等) ── 安いが現物確認が難しい。

おすすめは、JAの中古機械市か農機具販売店経由です。

保証の有無は売り手ごとに違います。

JAでも、公式ページに「保証期間はお買い上げ後の1シーズン」と書く所(JAたじま)と、「販売後の保証はないものとします」と書く所(JAさいかつ)がありました。

買う前に、保証と整備の内容を確かめてください。

ネットオークションでは、「写真では分からなかったオイル漏れやPTOの異音が届いてから見つかり、修理代を足したら販売店の整備済み中古より高くついた」という失敗パターンがよくあります。現物を確認できない買い物は、安く見えても安くないことが多いと覚えておきましょう。

2. 補助金・助成金を使う

トラクター単体の補助金は少ないものの、経営改善計画や畜産クラスター事業の中で機械整備が補助の対象になるケースは多くあります。

代表的なものは次のとおりです。

  • 畜産クラスター事業 ── 畜産農家グループ単位で機械・施設整備が対象。
  • 経営体育成支援事業 ── 認定農業者などが対象。トラクターも含めた機械整備に補助。
  • 強い農業づくり交付金 ── 産地・農業法人向けの大型補助。
  • 新規就農者の経営発展支援事業 ── 新規就農者の機械整備に対し定額補助。

どれも事前申請が必須で、買ってから「補助金ありますか?」と聞いても間に合いません。

購入を考え始めた段階で、JAや市町村役場の農政課に相談しましょう。

補助金の落とし穴3つ

落とし穴1:交付決定前の発注は対象外

初めての人がいちばん引っかかりやすいポイントです。

補助金の交付決定通知が届く前に農機を発注・契約・納品してしまうと、あとから補助の対象として認められない自治体が多いのです。

販売店に「在庫限り」と急かされて先に契約してしまい、補助を受けられなくなる、という失敗パターンがあります。「申請中だから先に動いても大丈夫」ではありません。

交付決定のあとに契約・発注するのが基本です。

落とし穴2:補助率の思い込み

「補助率2分の1」と聞くと、購入額の半分が戻ってくると思いがちですが、実際には事業計画上の標準単価を上限とすることが多くあります。

新車500万円の機械を買っても、標準単価が400万円なら補助の対象額は400万円までで、補助は200万円(2分の1)止まりです。

さらに、消費税相当額が補助の対象外になる制度もあります。

「半額戻る」前提で資金計画を立てると、入金のときに足りなくなることがあります。

落とし穴3:処分制限財産

補助金で買った機械は、原則として一定期間(おおむね法定耐用年数の間)勝手に売ったり捨てたりできません。

これを「処分制限財産」といいます。

途中で離農して機械を売ろうとすると、補助金の一部返納を求められることがあります。「もしも」のときにどうするかまで考えてから補助金を使いましょう。

3. リースを使う

初期費用を抑えたいなら、リース契約も有力な選択肢です。

リースのメリット:

  • 初期費用がとても少ない(月額のみ)
  • 経費計上できる(税務上有利な場合も)
  • メンテナンスが含まれているケースが多い
  • 契約満了時に新機種に乗り換えやすい

リースのデメリット:

  • 総支払額は購入より割高になることが多い
  • 中途解約に違約金がかかる
  • 自分の資産にならない

リースか購入か:使う年数で考える

5年以内で乗り換えるなら、リースが有利になりやすい

5年未満の使用なら、総コスト・税務・メンテ込みの手軽さでリースに分があるケースが多いです。

特に新規就農から数年は、規模に合わせて必要な馬力が変わりやすいので、機械を持たないほうが身軽です。

最初はリースでしのぎ、規模が固まってから中古を買う、という流れもよくあります。

10年以上使うなら、購入が有利になりやすい

同じ機械を10年以上使う覚悟があるなら、購入の総コストのほうが安くなるのが普通です。

特に稼働時間が少ない経営なら、長く使っても状態を保ちやすく、最後に中古で売ることもできます。

「買って、長く使って、最後は中古で売る」のがいちばん効率的です。

5〜10年の間は「試算してから決める」

この期間がいちばん判断に迷います。

販売店に「リースの見積もり」と「購入した場合の月々の返済額(残価設定型ローンを含む)」を両方出してもらい、整備費・税金・売るときの価値まで含めて比べましょう。

JAの営農指導員や税理士に相談するのが早道です。

4. 共同購入・共同利用

近くの農家と共同で買い、シェアして使うのも有力な方法です。

組合をつくる第一歩にもなります。

たとえば:

  • 4軒で1台を共同購入し、忙しい時期は順番に使う
  • 牧草収穫の時期だけ集中して使い、他の時期はメンテナンスに回す
  • 農家の中に整備ができる人がいれば、整備コストも分け合える

ただし、使う順番をめぐるトラブルも起きやすいので、利用ルールは書面で決めておきましょう。

畜産クラスター事業などの補助金と、中古・共同利用を組み合わせれば、1軒あたりの負担はさらに下げられます。

こうした組み合わせには、事前の情報集めと仲間づくりが欠かせません。

5. 県・市町村の独自の補助制度

国の補助金とは別に、都道府県や市町村が独自に機械整備の補助を設けていることがあります。

過疎地域や畜産振興地域では、上乗せの補助が手厚い場合もあります。

地元の市町村役場と農業会議に必ず確認しましょう。ここを見落とすと、本来もらえる補助を取りこぼします。

中古を買うときに見るべき5か所

中古トラクターを買うときに、押さえておきたいポイントを5つにまとめました。

1. アワーメーター(時間計)

最初に見るのが時間計です。

車でいう走行距離計にあたります。

何時間までなら安心かは販売店や機種によって考え方が異なるので、同じ型式・年式の相場と比べて判断しましょう。

ただし、メーターが戻されているのが疑われる個体もあるので、見た目の使用感(シートの擦れ、ペダルのすり減り、塗装の色あせ)と時間計が大きく食い違っていたら要注意です。

2. オイル漏れ(油圧・エンジン・ミッション)

機械の下に新聞紙を敷いて一晩置かせてもらえれば、いちばん見分けやすくなります。

無理なら、エンジンの下・油圧シリンダーの根元・ミッションケースの底を懐中電灯で照らして確認します。

にじむ程度なら整備で直せることもありますが、ポタポタ垂れているものは避けたほうが無難です。

油圧系の修理は高くつきがちです。

3. タイヤの片減り

前輪・後輪のタイヤを正面から見て、片側だけすり減っている個体は、アライメント不良やフロントアクスルの歪みが疑われます。

放っておくと直進しにくくなり、ロータリー作業の精度も落ちます。

買ってすぐにこの修理が必要になると、安く買った意味がなくなってしまいます。

4. PTOシャフトと作業機の接続部

エンジンをかけてもらい、PTO(動力取出軸)を回したときの音と振動を確認します。

「カラカラ」「ガラガラ」と金属が当たるような音がしたら、PTOクラッチやベアリングに問題があるかもしれません。

「動くから大丈夫」と異音を放っておいて、あとで大きな修理になる、というのはよくある失敗パターンです。

5. 電装系(バッテリー・配線・計器類)

意外と見落とされやすいのが電装系です。

キーを回してから始動するまで何秒かかるか、計器類がすべて正常に点くか、ヘッドライト・作業灯・ウインカーが全部点くかを確認します。

冬に除雪で使うなら、バッテリーの状態は特に大事です。

配線がネズミにかじられていたり、コネクタがさびていたりする個体も少なくありません。

電装系の傷みは、気温が下がってから表に出やすいものです。

夏の試運転で問題がなくても、冬の朝にエンジンがかからなくなる、ということがあります。

この5か所をチェックリストにして持っていくだけで、大きなハズレはかなり避けやすくなります。

牛飼い君
中古って、エンジンがかかれば大丈夫なんじゃないの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
動くだけじゃ判断できないんだ。時間計やオイル漏れ、PTOの異音まで見ておくと、後の高額修理を避けやすいよ。

JA・販売店・中古専門店・ネットの使い分け

それぞれの買い方には、得意・不得意があります。

JAの中古機械市

得意:地元での整備履歴が追える機械が出やすい。前の持ち主が近くの農家のことも多く、評判が伝わってくる。価格交渉もしやすい。 不得意:開催が少ない(年に1〜2回の地域も多い)。タイミングが合わないと出会えない。 こんな人向け:地域のつながりを生かして長く農機を維持したい人、整備の相談相手としてJAを使い続けたい人。

農機具の販売店(クボタ系・ヤンマー系・井関系の正規代理店)

得意:整備済み・保証付きが基本。下取り・買取・部品供給までまとめて対応。アフターサービスが手厚い。 不得意:中古の買い方の中では価格が高め。値引きの余地も少ない。 こんな人向け:機械トラブルで作業が止まるのをいちばん避けたい人。整備の相談先が必要な新規就農者。

専業の中古農機販売店

得意:取扱台数が多く、選択肢が広い。全国から集めているので、珍しい馬力帯・メーカーも見つかりやすい。 不得意:店によって整備の質に差がある。遠くの店だと現物確認が難しい。 こんな人向け:特定のメーカー・型式にこだわりがある人。同じ型の予備機を探している人。

ネットオークション・個人売買サイト

得意:価格がとても安い。掘り出し物が出ることもある。 不得意:現物確認が難しい。保証なし。輸送費は別。クレーム対応も基本的に期待できない。 こんな人向け:自分で整備ができる人、または部品取り目的で買う人。初心者にはおすすめしません。

目安としては、新規就農から数年は販売店、慣れてきたらJAの中古市や中古販売店、自分で整備できるようになってからネットという順番が安全です。

よくある失敗パターン

「動く=使える」と判断してしまう

中古の失敗で多いのが、試運転で「動いた」だけで決めてしまうケースです。

PTOの異音を放っておいてシャフトが折れる、フロントローダーを上下させただけで決めたら油圧の力が落ちていて作業が遅い、といった失敗パターンがあります。

油圧系は「動くか」だけでなく、速さ・粘り・異音まで確認しましょう。

中古は、今動くかどうかだけでなく「あと何年、どのくらい働けるか」を見ることが大切です。

勢いで新車を買って資金繰りが苦しくなる

規模を広げるタイミングで、補助金もリースも検討せずに銀行借入で新車を一括購入し、翌年に子牛価格が下がって返済に苦しむ、というケースがあります。新車を買うなら、資金繰りの計画と補助金の活用をセットで考えましょう。

「いつか規模を広げるから」と大きすぎる馬力を買う

将来の規模拡大を見込んで大きな馬力のトラクターを買ったものの、計画が進まず、今の作業には大きすぎる状態が続く、という失敗パターンもあります。

燃料代・メンテ費がかさみ、取り回しも悪くなります。「将来のために大きめを」は、現実が追いつかないと負担になります。

今の作業量に合った馬力を基準に選びましょう。

下取りで損しないための準備

買うときだけでなく、売るときのことも考えておきましょう。

今の機械をいくらで下取り・売却できるかで、次の機械の予算が変わります。

1. 整備の記録を残しておく

「いつ、どこで、いくらかけて何を直したか」が分かる個体は、買い手が安心できるので査定で有利になります。

整備やオイル交換の記録をノートにまとめておきましょう。

2. 洗車して見た目を整える

泥や油が付いたままだと査定が下がりがちです。

売る前に高圧洗浄機で泥を落としておきましょう。

3. 複数の会社から査定を取る

下取りを販売店1社だけに任せると、相場より低い査定になることがあります。できれば3社から査定を取りましょう。

たとえば(1)購入予定の販売店、(2)中古農機の買取専門業者、(3)ネットの買取サービス、の3つから見積もりを取り、いちばん高い金額をもとに購入先と交渉するのが基本です。

4. 売る時期を考える

中古農機は、新規就農者の準備や作付けの前にあたる春先に需要が高まりやすいとされています。

逆に、収穫が終わった冬場は需要が落ちやすく、急いで売ると値が下がりがちです。

損をしないための考え方

最後に、損をしにくい機械のそろえ方の考え方をまとめておきます。

  • 機械に役割を決める:「何に、年間何時間使うか」を書き出すと、必要な馬力・装備が絞れて、買いすぎを防げます。
  • 補助金は買う前に調べる:購入を考え始めた段階で、JA・市町村役場・農業会議に相談します。
  • 整備士と良い関係を築く:地元の整備士と普段から付き合いがあると、忙しい時期の故障でも相談しやすくなります。
  • 最新より「直せる」を重視する:電子制御の多い最新機は便利ですが、田畑の真ん中で電子系のトラブルが起きると自分では手が出せません。構造がシンプルで部品が手に入りやすい機械を選ぶのもひとつの考え方です。
  • 購入計画を数年先まで描く:場当たり的に買うと、補助金のタイミングも下取りの時期も逃しがちです。
  • 「買わない」選択肢も持つ:コントラクター(農作業の受託組織)への外注、リース、近くの農家との共同利用など、持たない方法も比べます。所有は手段で、目的ではありません。
牛飼い君
結局、どの買い方が一番いいの?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
正解は一つじゃないんだ。自分の経営スタイルと使用頻度に合った調達法を、JAや税理士に相談しながら選ぶのが安心だよ。

まとめ:トラクターは組み合わせで安くなる

新車だけが選択肢ではありません。

中古・補助金・リース・共同購入・自治体の独自制度。

この5つを組み合わせれば、初期費用を大きく抑えられます。

  • 中古は整備済み・保証付きを軸に、5か所を点検して選ぶ
  • 補助金は交付決定のあとに発注する
  • 使う年数でリースか購入かを決める
  • 下取りは複数社から査定を取る

迷ったときは、地元のJAの営農指導員、農機販売店の担当者、そして信頼できる先輩農家に相談してみてください。

一人で決めるより、きっと納得のいく選び方ができます。

あわせて読みたい

📒 農業の確定申告、ソフトを使えば驚くほど楽になる

農家の確定申告は複雑だ。

牛の売買・飼料費・設備の減価償却など項目が多い。

クラウド会計ソフトを使えば、日々の帳簿入力から複式簿記の帳簿づくりまで自動化できる(農業所得用の決算書は国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成する)。

農業経営を数字で管理するための最初の一歩として、一度試してみることをすすめる。1ヶ月の無料お試しができ、クレジットカード登録も不要だ。

まずは自分の帳簿で使い勝手を確かめられる。

参考文献・出典

─ 産地直送・目利き保証 ─

🏮 さんぼう君の新鮮市場

現場を知る大将が「間違いない肉と野菜」だけを並べました。肉のふるさと納税・お取り寄せ・野菜定期便 →


─ さんぼう君よりひとこと ─

この記事は、農業と畜産を営む家で育った経験と、飼料営業として担当エリアの現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

実家は農業と畜産。その実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

→ さんぼう君について詳しく