獣害対策棚|電気柵・防獣ネットの選び方は「相手」で決まる
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📑 目次
※本記事はプロモーションを含みます。
獣害対策の道具は「相手」で決まる。
イノシシは最下段を地上20cm前後に置いた電気柵、シカは高さ150cm以上の物理柵、ハクビシン・アライグマは電気柵か複合柵、カラスなどの鳥は防鳥網が主軸になる。相手を特定しないまま柵やネットを買うと、空振りになりやすい。道具全体の話は現場の道具棚にまとめた。
⚠️ 安全上のお願い:電気柵は法令で安全要件が定められた設備です。必ず市販の電気柵用電源装置(PSEマーク付き)を使い、取扱説明書と本文で紹介する法令上の要件に従って設置してください。家庭用コンセントや自作の電源を直接つなぐことは法律で禁止されており、過去に死亡事故も起きています。本記事は一般的な情報の整理であり、個別の設置判断は製品の取扱説明書と自治体・専門業者への相談を優先してください。
先に結論。獣害対策棚の三原則
① 買う前に、相手を特定する。足跡・食べ方・入られた場所。この3つで加害獣はかなり絞れる。相手が決まるまで、柵は買わない。
② 電気柵は「痛みを学習させる装置」である。だから電圧が落ちた柵は、効かないどころか「この柵は痛くない」と教えてしまう。張る距離は、点検できる距離まで。
③ におい・音・光は、主役にしない。公的マニュアルがはっきり「慣れる」と書いている。柵の補助として、置き場所を変えながら使う。
この記事で分かること
- 加害獣の絞り込み方と、相手別に効く対策
- 電気柵の選び方と、法令で求められる4つの安全要件
- 目合いの数値、におい・音・光のグッズの検証結果
獣害対策は、柵を選ぶ前に「相手を特定する」ところから始まる
農林水産省の「野生鳥獣による農作物被害状況」によれば、令和6年度の全国の被害金額は188億円。
前年度から24億円増えている。
被害面積は4万4千ha、被害量は73万tだ。
| 加害獣 | 令和6年度の被害金額 | 前年度差 |
|---|---|---|
| シカ | 78.5億円 | +9.0億円 |
| イノシシ | 44.6億円 | +8.2億円 |
| カラス | 13.6億円 | +0.2億円 |
| ヒヨドリ | 8.1億円 | +4.7億円 |
| サル | 7.7億円 | +0.7億円 |
| アライグマ | 6.9億円 | +2.1億円 |
| クマ | 5.2億円 | −2.2億円 |
| ハクビシン | 4.8億円 | +1.1億円 |
| カモ | 3.5億円 | −0.3億円 |
| 合計 | 187.5億円 | +24.0億円 |
(出典:農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)」別添1/2026年8月時点で確認。単位は百万円表記を億円に換算。合計は表に載せていない獣種・鳥類を含む全鳥獣の全国計のため、表の9種の合計とは一致しない)
3番目に大きいのはカラスだ。アライグマとハクビシンを足すと11.7億円になり、サル単独を上回る。
相手は、痕跡でかなり絞れる
道具を買う前に、誰にやられたのかを確定させる。
判断材料は3つある。
| 見るところ | 分かること |
|---|---|
| 入られた場所 | 地際が掘られている=イノシシ/柵の上を越えた=シカ・サル/支柱や木を伝った=中型獣 |
| 食べ方 | 掘り返して根まで=イノシシ/株ごと引き抜かず先端だけ=シカ/実を持ち去る・つつく=鳥類 |
| 時間帯と足跡 | 夜間に決まった通り道ができているか。ぬかるみに残る足跡の形と大きさ |
農林水産省と農研機構は、痕跡から加害獣を判別するための資料を公開している。
分からないときは、市町村の鳥獣被害対策の担当窓口に写真を持ち込むのが早い。
アナグマも穴を掘るので、掘り跡だけでイノシシと決めつけない。
相手別・効く対策と効かない対策の早見表
同じ「柵」でも、相手が変われば正解が入れ替わる。
| 相手 | 効く主軸 | 効きにくい/不向きなもの | 根拠になる特性 |
|---|---|---|---|
| イノシシ | 電気柵(最下段を地上20cm前後)/地際を密着させた物理柵 | 地際が浮いた柵、目合いの粗い柵 | 上を越えるより下をくぐる傾向。鼻先は電気に弱いが体毛は剛毛 |
| シカ | 高さ150cm以上の物理柵/段数を増やした電気柵 | 低い柵、上部が折り返されていない柵 | 跳躍力が高い。柵の高さが実質的に足りないと越える |
| ハクビシン・アライグマ | 電気柵、または金網柵の上部に電気さく線を組み合わせた複合柵 | 物理柵の単独使用 | 樹上活動性に富み、よじ登って越える |
| タヌキ・アナグマ | 電気柵(地上10・20・30・40cmの4段)/目合いの細かい物理柵 | 目合い10cm四方以上のワイヤーメッシュ | アナグマは穴を掘る。成獣は10cm四方以上の目合いを通り抜ける |
| サル | 物理柵と電気柵の複合柵 | 単独の物理柵 | よじ登る能力が高い。柵を登って越える |
| カラス・ヒヨドリ等 | 防鳥網(対象種が通れない目合い)/テグス | 置くだけ・鳴らすだけの装置 | 学習して慣れる |
(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル」各編/2026年8月時点で確認)
見落とされやすいのがハクビシン・アライグマの行だ。
農林水産省の現行の中型獣類編(令和6年3月)は、物理柵は「登ることを優先するアライグマ、ハクビシン、テンなどには通用しない」としたうえで、電気柵、そして金網柵の上部に電気さく線を追加する「複合柵」(金網柵の全面がアースになる方式)を示している。
目合いは抜けられない5cm以下にする、とも明記されている。
ハクビシンにやられているなら、金網柵をただ高くするのではなく、電気を足す。
電気柵の選び方は、電源方式・段数・アースの3点で決まる
① 電源方式——見回りの頻度で選ぶ
電気柵の本器に使う電源には、電池、バッテリー、ソーラーパネル、商用電源(AC100Vまたは200V)がある(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」)。
| 電源方式 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 乾電池式 | 小面積・家庭菜園・短期間 | 電池交換の周期を決めておかないと、気づかず切れている |
| バッテリー式 | 中面積・毎日見回れる圃場 | 充電のために外す手間がある |
| ソーラー式 | 見回りが週数回・電源のない場所 | 冬季の日照と積雪で発電が落ちる。パネルの向きと汚れの管理が要る |
| 商用電源式 | 母屋や倉庫が近く、常設で使う場所 | 柵線に商用電源を直接流すのは法律で禁止。必ず電気さく用電源装置を通す |
「自分が現実に見回れる頻度」に合わせて選ぶ。
② 段数と高さ——「20cm刻み」と「鼻の高さ」で決まる
農林水産省のマニュアルはこう書いている。柵線の高さは20cm刻みに。イノシシやシカで感電するのは鼻先だけで、外皮はほとんど電気を通さない。最下段の電線は、イノシシの鼻の位置(地上20cm程度)にくるように——(出典:農林水産省「【改訂版】野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ・シカ・サル実践編」平成26年3月・現在は「過去のマニュアル」として公開)。
イノシシの体毛は太く剛毛で、体が電気柵に触れても平気。効くのは体毛の薄いところだけ——現行の総合対策編は「鼻先」「お腹」「足の裏」の3か所を挙げている。「柵線に触れさせる」のではなく「鼻先に触れさせる」のが電気柵の設計思想である。
| 相手 | 柵線の段数と高さ |
|---|---|
| イノシシ | 最下段を地上20cm前後に置き、20cm刻みで上へ |
| シカ | 同じく20cm刻みで、飛び越えられない高さまで段数を増やす |
| ハクビシン・アライグマ | 2段(地上5cm・10cm) |
| タヌキ・アナグマ | 4段(地上10・20・30・40cm) |
イノシシについては、現行の総合対策編(令和5年3月)が電線の間隔は20cm以下が適しており、潜り込み習性があるため段数は2段または3段で十分としている。
中型獣の高さは旧・中型獣類編の数字だ。
ハクビシン用の地上5cmについて、マニュアル自身が「地上高5cmの柵線では下草の管理が非常に煩雑になり現実には難しい」と認めている。
防草シートの利用のほか、柵線の地上高を10cmにし、電気柵と農作物の間に防風ネットなどの障害物を置くことで柵線に触らせる方法も示されている。
③ アースと設置——ここを外すと、全部が無駄になる
電気柵は、柵線がプラス、地面がマイナスの回路である。アースの出来が悪ければ、効果は落ちる。マニュアルのチェックポイントは次のとおりだ。
- アースは完全に地中に埋める。数本ある場合は幅広く設置する
- ガイシは外向きに。内側を向いていると、電線に触れる前に支柱が押し倒される
- 足が土に触れる位置に設置する。アスファルトの縁に張ると、前足が舗装に乗ったままで十分な電気が流れない。舗装路沿いに張る場合、支柱は舗装路から50cm以上離す
- 定期的に電圧をはかる。効果を発揮するには6,000〜8,000ボルト以上の電圧が必要(平成26年実践編の数値。旧・中型獣類編は5,000〜10,000ボルトとしている)
(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル」イノシシ・シカ・サル実践編(平成26年3月)/中型獣類編/2026年8月時点で確認)
「張ってある」と「効いている」は別の状態だ。電気柵を買うときは、検電器(テスター)も一緒に買う。
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電気柵には、法令で決まった4つの安全要件がある
まず、電気柵は原則「禁止」から始まっている
電気設備に関する技術基準を定める省令 第七十四条(電気さくの施設の禁止)
電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、感電又は火災のおそれがないように施設するときは、この限りでない。
(出典:e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」平成9年通商産業省令第52号/2026年8月時点で確認)
電気柵は「条件を満たしたときだけ許される設備」だ。
満たすべき条件は、この4つ
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| ① 危険表示 | 電気さくを施設した場所には、人が見やすいように適当な間隔で危険である旨の表示をする |
| ② 専用電源装置 | 電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置、または感電の危険がないよう出力電流が制限される装置から電気供給を受ける |
| ③ 漏電遮断器 | 使用電圧30V以上の電源から供給を受け、人が容易に立ち入る場所に施設する場合、電流動作型で定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を設ける |
| ④ 専用の開閉器 | 容易に開閉できる箇所に専用の開閉器(スイッチ)を施設する |
(出典:農林水産省「鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について」/経済産業省「『電気さく』を設置する際の安全確保等のお願い(再周知)と政府の対応状況」/2026年8月時点で確認)
背景には、平成27年7月19日に発生した「電気さく」による感電死傷事故がある。
事故後の安全点検で、十分な安全対策が講じられていなかった電気さくが確認されたことが、経済産業省の公表資料に記されている。この4要件は、法令上の最低ラインである。
実務でいちばん引っかかるのは「危険表示板」と「電源」
- 危険表示板。セット付属の枚数で「適当な間隔」を満たせるか確認し、足りなければ買い足す
- 商用電源からの直結。中型獣類編は「商用電源(AC100ボルトまたは200ボルト)から直接柵線に電気を流すことは、法律で禁止されている」と明記している
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ネットと柵の使い分け——「物理柵」と「心理柵」は目的が違う
農林水産省は侵入防止柵を、大きく2つに分けている。
- 物理柵(ワイヤーメッシュ柵・金網柵・ネット柵)=強度を持たせた柵の「高さ」で出入りをコントロールする
- 心理柵(電気柵)=学習効果によって柵を回避させる行動をとらせる
物理柵は対象動物に合わせて高さを決める必要があり(イノシシ用は80cm以上、シカ用は150cm以上)、よじ登る能力が高い動物(サル、ハクビシン等)には不向き。
心理柵は適正な電圧を維持することと、対象動物の鼻の高さに合わせて設置することがポイントだ(出典:農林水産省)。
| 物理柵 | 心理柵(電気柵) | |
|---|---|---|
| 防ぐ仕組み | 高さと強度で通さない | 痛みを学習させて近づかせない |
| 強い場面 | 総延長が長い、頻繁に見回れない場所 | 個人の農地、設置と撤去が簡単 |
| 弱点 | 施工の手間、よじ登る動物に無力 | 電圧が落ちると効果が消える |
| 管理の中心 | 地際の隙間と破損の補修 | 草刈りと電圧測定 |
目合いという、地味だが決定的な数字
| 対象 | 目合いの基準 |
|---|---|
| イノシシ(幼獣) | 15cm格子は通り抜ける。成獣も20cm程度の隙間は潜り抜ける |
| アナグマ(成獣) | ワイヤーメッシュの目合いが10cm四方以上だと通り抜ける。旧マニュアルは7.5cm四方以下、現行版(令和6年3月)は5cm以下を目安とする |
| カラス | 防鳥網は75mm以下 |
| ヒヨドリ・ムクドリ | 30mm以下 |
| スズメ | 20mm以下 |
(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル」イノシシ・シカ・サル実践編/中型獣類編/鳥類編/2026年8月時点で確認)
鳥類編は、45mm程度以上の粗い網目の網や、細い糸の網は鳥類が絡みやすいとし、市販の青色の「強力防鳥網」(30mm目・1,000デニール)と橙色の「防鳥網」(30mm目や45mm目・400デニール)を比べて、糸が太く耐久性のある強力防鳥網のほうがよいとしている。
設置の三原則は、農林水産省がもう書いている
侵入防止柵設置にあたっての3原則
① 農作物の味を覚えさせない。
② 物理柵に隙間を作らない。対象動物に対して効果の低い柵は使わない。
③ 電気の流れていない電気柵を設置しない。「電気柵は痛くない」という学習をさせない。
同じマニュアルは、冬季も通電を続けるか、冬季は柵を撤去する管理を挙げている。
張る距離は、点検できる距離までにする。
設置後は、柵の下部を地面に密着させ、地際を補強する、外側に折り返すなどして掘り返しを防ぐ。柵の上部を外側に折り返すと飛び越えにくくなる。
柵の周囲は随時除草し、点検のための管理道にする。
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におい・音・光のグッズは、どこまで効くのか
農林水産省の鳥類編マニュアルは、「はじめに」でこう述べている。鳥害対策はここ数十年の間、防鳥網を張り、鳥と作物を遮断することが最も確実な方法であり、現在でもその認識に変わりはない。残念ながら置くだけや鳴らすだけで、鳥を永続的に追い払える機器は未だ開発されていない——(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【鳥類編】」令和6年3月)。
忌避「剤」と忌避「資材」は、まったく別物
同マニュアルは、農薬登録のある忌避剤と、それ以外の忌避資材は全く別物であるので区別が必要とし、後者をこう評価している。
鳥獣は、このような資材を新奇な刺激として一時的に忌避する場合はあるが、匂いなどの不利益を伴わない刺激が永続的な忌避効果を持つことはなく、初めから効果がないことも多い——農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【鳥類編】」より
磁石については、検証結果まで出ている
市販の防鳥用品と同様の強さの磁石を、見えないように餌台に設置してカラスとスズメで実験したところ、来訪回数・餌の消費量・平均滞在時間のいずれにも差はみられず、比較的強力な1,200ガウスの磁石に忌避させる効果はないと考えられたとされている(同前)。
では、補助的に何が使えるのか
公的に効果が示されているのがカラスに対するテグスだ。
鳥類編は、透明色で線径0.74mm(20号)前後のものが適し、張る間隔はカラスが翼を広げた両端までの長さ(約1m)と同じか、それより狭くするとよいとしている。
ただしテグスは絶対的な遮断ではないので、状況によっては侵入されるとも書かれている(同前)。
| 種類 | 位置づけ |
|---|---|
| 防鳥網・電気柵・物理柵 | 主役。ここに予算を置く |
| テグス(カラス) | 準主役。線径と間隔を守れば有効 |
| 音・光・反射材 | 補助。慣れる前提で、置き場所と種類を定期的に変える |
| 匂い系の忌避資材 | 期待しない。一時的な新奇刺激として扱う |
| 磁石 | 検証で効果は確認されていない |
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やってはいけない獣害対策
① 商用電源を柵線に直結する
商用電源(AC100Vまたは200V)から直接柵線に電気を流すことは法律で禁止されている。人が容易に立ち入る場所で商用電源型の本器を使う場合は、本器のPSEマークを確認したうえで、漏電遮断器の使用が法律で定められている。DC12V型の本器でACアダプターを使う場合も、ACアダプターのPSEマーク確認と漏電遮断器が求められる(出典:農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」)。
② 危険表示を省く
危険表示は法令上の要件であり、通りかかった人を守るための表示だ。
③ 効いていない電気柵を張りっぱなしにする
冬季も通電を続けるか、撤去する。
④ 許可なく捕獲する
捕獲には原則として狩猟免許が必要だと、農林水産省のマニュアルが明記している。
外来種でも、アライグマのような哺乳類は手続きなしでは捕れない。
環境省は特定外来生物の防除について、鳥獣保護管理法で規制される哺乳類・鳥類は「防除の確認認定」を受けるか、その従事者となる必要があり、これらを得ていない場合は鳥獣保護管理法の許可等が必要となる場合があるとしている。
また、特定外来生物を生きたまま保管・運搬する場合は事前の手続きが必要で、市町村や民間事業者等であれば「防除の確認・認定」を受けることになる(出典:環境省「日本の外来種対策|防除に関するQ&A」/2026年8月時点で確認)。
捕獲を考えた時点で、市町村の鳥獣被害対策の窓口に相談する。
⑤ 一軒だけで完結させようとする
柵は面で効く。
隣の畑が無防備なら、そこが餌場になる。
農林水産省は、「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づき、現場に最も近い行政機関である市町村が中心となって実施する野生鳥獣に対する様々な被害防止のための総合的な取組を支援していますとしている。
その財政的な受け皿が鳥獣被害防止総合対策交付金で、令和8年度分の支援内容や交付要綱も公表されている(出典:農林水産省「鳥獣被害対策コーナー」「予算」)。
個人で柵を買う前に、自分の市町村が被害防止計画を持っているか、使える枠がないかを確認する。
申請の流れは補助金申請の流れ5ステップに書いた。
大将のひとこと——「隣の畑」に、どこまで口を出していいのか
配合飼料と畜産資材の代理店営業をしていた頃、担当先には良くも悪くも、のんびりした農家があった。
後継ぎが経営者の器ではないと感じても、営業の自分が経営にまで口を出していいのか。最後まで答えは出なかった。
獣害も、一軒だけで完結しない問題だ。
隣に声をかけるのが正解でも、正しさと、言えるかどうかは別の話だ。
だから制度を使ってほしい。市町村の被害防止計画、地域協議会、交付金は、「隣に声をかける口実」の仕組みでもある。
窓口に相談する、という一手が、いちばん角の立たない解決策だと思う。
よくある質問(FAQ)
Q. 獣害対策で、まず何から始めればいいですか?
加害獣の特定です。入られた場所、食べ方、足跡の3点で、かなり絞れます。判断がつかないときは、市町村の鳥獣被害対策の窓口に写真を持ち込んでください。
Q. 電気柵の選び方で、いちばん大事なのはどこですか?
段数と柵線の高さ、そしてアースです。最下段を地上20cm程度に置き、20cm刻みで段を上げ、検電器で定期的に電圧を測ってください。
Q. 電気柵は素人が設置しても違法になりませんか?
①危険である旨の表示、②電気さく用電源装置の使用、③漏電遮断器の設置、④専用の開閉器の設置の4点を守れば設置できます。商用電源の直結は禁止です。
Q. 防獣ネットは、どの目合いを選べばいいですか?
相手で決まります。
アナグマなど中型獣は現行マニュアルで5cm以下、防鳥網はカラス75mm以下、ヒヨドリ・ムクドリ30mm以下、スズメ20mm以下が目安です。
Q. 柵を張ったのに、また入られました。何を見直せばいいですか?
①地際(裾の浮き・隙間)、②草(柵周囲の除草)、③電圧(検電器で測る)、④仕様(段数・目合い・高さ)の順に見直してください。
Q. においや音の忌避グッズは効きますか?
主役にはできません。公的マニュアルも永続的な効果を認めていません。柵の補助として使うのが現実的です。
Q. 冬のあいだ、電気柵はどうすればいいですか?
通電を続けるか、撤去するかの二択です。張ったまま電気を止めると、「この柵は痛くない」と学習させてしまいます。
Q. わなで捕獲してもいいですか?
原則として狩猟免許が必要です。アライグマ等の特定外来生物でも手続きが要ります。市町村の担当窓口に相談してください。
まとめ:柵を張る前に、相手を見きわめる
- 相手を特定してから買う——イノシシ・シカ・中型獣・鳥類で正解が入れ替わる
- 電気柵は電源方式・段数・アースの3点と、法令の4要件を守る
- におい・音・光は補助。張る距離は、点検できる距離まで
相手が決まれば、買うものは決まる。
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参考文献・出典
本記事の統計・法令・技術基準に関する記述は、以下の一次情報に基づく(2026年8月時点で内容を確認)。
制度・仕様・価格は改定されることがあるため、設置・購入の前に各公式サイトおよび市町村の担当窓口で最新情報を確認してほしい。
- 農林水産省「農作物被害状況(野生鳥獣による農作物被害)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
- 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(令和6年度)別添1」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/attach/pdf/index-52.pdf
- 農林水産省「鳥獣による農作物等の被害の防止に係る電気さく施設における安全確保について」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/tyuuikanki/denkisaku.html
- e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成9年通商産業省令第52号)第74条 https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052
- 経済産業省「『電気さく』を設置する際の安全確保等のお願い(再周知)と政府の対応状況」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2015/08/270831-1.html
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/dengikaishaku.pdf
- 農林水産省「農村地域(農地・農業用施設)へのイノシシ・シカ侵入防止対策の手引き(効果的な対策)」 https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/attach/pdf/index-69.pdf
- 農林水産省「【改訂版】野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ・シカ・サル実践編」(平成26年3月・過去のマニュアル) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/attach/pdf/6_old_manual-1.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」(平成30年3月・旧版) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/manual_tyuugata_jyuurui/180330-5.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」(令和6年3月・現行版) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/R5_tyuugata/r5_tyuugata_0.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【総合対策編】」(令和5年3月) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/attach/pdf/manual-42.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【鳥類編】」(令和6年3月) https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/pdf/r5_tyourui.pdf
- 農林水産省「野生鳥獣による被害防止マニュアル等」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/manual.html
- 農林水産省「予算|鳥獣被害対策コーナー(鳥獣被害防止総合対策交付金)」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/yosan/yosan.html
- 農林水産省「鳥獣被害対策コーナー」 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/
- 環境省「日本の外来種対策|防除に関するQ&A」 https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/qa.html
- 環境省「日本の外来種対策|何が禁止されているの?」 https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/regulation.html
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この記事は、農業と畜産を営む家で育った経験と、飼料営業として担当エリアの現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。
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