養鶏(鳥)

養鶏は儲かる?採卵鶏とブロイラーの収入・経営の現実【飼料営業の現場目線】

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📑 目次
屋外で過ごすニワトリ|養鶏の経営のイメージ
写真:Living Off Grid(CC BY / Openverse)
牛飼い君
養鶏って、卵が毎日売れるし安定して儲かりそうなイメージなんですけど。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
それがね、養鶏は「採卵鶏」と「ブロイラー」で全然違うんだ。しかも卵をとる採卵鶏は、赤字の年もある厳しい世界。数字で正直に見ていこう。

「養鶏は儲かるのか」。答えは、何の鶏を、どの規模でやるかで大きく変わる。飼料営業として全国の鶏舎を回ってきたさんぼう君が、養鶏の収入のリアルを正直に整理する。

⚠️ 本記事の金額は各種統計・調査をもとにした「目安」です。「農業所得」は売上から経費を引いた額で、年・規模・地域で大きく変動します。手取りとは異なる点にご注意ください。

採卵鶏とブロイラーは「別の商売」

ひとくちに養鶏といっても、中身は2つに分かれる。

  • 採卵鶏(卵をとる)……卵を出荷して稼ぐ。卵価の変動と飼料費に大きく左右される。
  • ブロイラー(肉をとる)……肉用の鶏を育てて出荷。契約出荷が多く、生産期間が約50日と短い。

この2つは、収益の安定度がまるで違う。実際、ある年(令和元年)の農業所得の平均では、採卵養鶏は赤字、ブロイラー養鶏は黒字という結果になった。翌年には採卵養鶏も黒字に転じており、採卵鶏は年によって黒字と赤字を行き来するのが実態だ。

1羽あたりのコストが、ここまで違う

採卵鶏とブロイラーの違いは、1羽あたりの生産コストにもはっきり出る(令和元年の統計をもとにした目安)。

区分1羽あたりの生産コストの目安
採卵鶏おおむね 3,300円台
ブロイラーおおむね 440円ほど

採卵鶏は長く飼って卵を産ませ続けるため、1羽にかかるコストが大きい。ブロイラーは短期間で出荷するため、1羽あたりは小さい。「どちらが儲かる」ではなく、ビジネスモデルが別物だと考えたほうがいい。

規模の世界──数万羽が当たり前

今の養鶏は、すっかり規模の勝負になっている。一戸あたりの飼養数は平均で約8万羽。採卵鶏では1,000万羽以上を飼う企業もあり、200〜400万羽クラスの大手10数社が、鶏卵市場の大きな部分を握っている

「個人で手取り1,000万円超」という養鶏家もいるが、それは周囲の条件に恵まれた一部。よく出てくる平均所得の数字は、大規模経営が押し上げている面が大きい。平均=自分の取り分ではない、と冷静に見ておきたい。

牛飼い君
卵が毎日売れても、儲けが出るとは限らないんですね……。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そう。鍵はやっぱり「飼料費」なんだ。これは飼料を売ってきた私が、いちばん現場で見てきたところだよ。

飼料営業が見た「養鶏の利益の正体」

鶏卵の生産コストのおよそ6割は飼料代だ(農林水産省の資料では5〜6割とされる)。だから養鶏の利益は、飼料費にほぼ握られている。

実際、近年は飼料代・燃料代がおよそ2倍に上がったのに対し、卵の価格の上昇は3割ほどにとどまった時期があった。コストが倍になって売値が3割しか上がらなければ、利益は出ない。これが、近年の養鶏農家の倒産・廃業が相次いだ背景だ。

飼料を売ってきた立場から正直に言うと、養鶏で稼ぐ農家は、**「卵をたくさん産ませる」より「飼料効率(同じエサでどれだけ卵をとれるか)を上げる」**ことに徹している。エサ代を制した者が、養鶏の利益を手にする。

よくある質問(FAQ)

Q. 養鶏は儲かりますか?

ブロイラーは契約出荷で比較的安定しやすく、採卵鶏は卵価と飼料費で黒字・赤字を行き来します。どちらも飼料費の管理が利益を大きく左右します。「卵が毎日売れる=必ず儲かる」ではない点に注意が必要です。

Q. 採卵鶏とブロイラー、どちらが安定していますか?

一般に、契約出荷が多く生産期間の短いブロイラーのほうが、コスト管理がしやすく安定しやすいとされます。採卵鶏は卵価の変動を受けやすい傾向があります。

Q. 養鶏で個人でも稼げますか?

手取り1,000万円超の個人経営もありますが、条件に恵まれた一部です。平均所得の数字は大規模経営が押し上げているため、自分の取り分と混同しないことが大切です。

Q. 養鶏のコストで一番大きいのは何ですか?

飼料代です。鶏卵の生産コストのおよそ6割を占めるとされ、飼料価格の上昇が利益を直接圧迫します。

同業の養鶏家は、どう稼いでいるか

規模で勝負する大規模経営がある一方、小さく付加価値で成り立たせている養鶏家もいる。たとえば、脱サラして平飼いを始めたある養鶏家は、約1,000羽で1日およそ500個の卵を育てて販売しているという(マイナビ農業)。経営者から自然養鶏家に転じた別の生産者は、1個150円という価格でも選ばれる卵づくりで暮らしを立てている(greenz.jp)。同業の発信からも、「数で勝てないなら、質と売り方で勝つ」という道筋が見えてくる。

さんぼう君の現場メモ:飼料費の重さは、実家でも同じ

私の実家は和牛の繁殖と野菜だが、畜産はどれも「飼料費との闘い」だと、親を見ていて痛感する。牛も鶏も、エサ代が経営を左右するところは同じだ。

卵が毎日売れても、飼料が上がれば手取りは消える。養鶏で稼ぐ人が飼料効率(同じエサでどれだけ卵をとれるか)にこだわるのは、現場では当たり前の感覚だ。数字の裏で、毎日出ていくエサ代をどう抑えるか——そこに、養鶏経営の本当の勝負がある。

まとめ──養鶏の利は「飼料の壁」を越えた者に

  • 採卵鶏は黒字・赤字を行き来、ブロイラーは比較的安定
  • 1羽あたりコストは採卵鶏が大きく、ブロイラーは小さい(別ビジネス)
  • 今は数万羽規模が当たり前。平均所得は大規模が押し上げ
  • コストのおよそ6割は飼料代。飼料効率を制した者が稼ぐ

卵は安く、エサは高い。養鶏の利益は、飼料の壁を越えられるかどうかで決まる。これが、鶏舎を回ってきたさんぼう君の実感だ。

参考・出典

  • 鶏鳴新聞「令和元年の農業所得 採卵養鶏は赤字、ブロイラー養鶏は黒字」
  • マネーフォワード クラウド「養鶏場は儲かる?」
  • あぐりマッチ「畜産農家の年収」
  • 農林水産省「畜産経営をめぐる情勢」

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─ さんぼう君よりひとこと ─

この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

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