経営の知恵

生乳価格(乳価)はどう決まる?飲用・加工の用途別乳価のしくみ【現場目線】

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📑 目次
牧草地で草を食む乳牛(ホルスタイン)|生乳・乳価のイメージ
写真:huggleperson(CC BY / Openverse)
牛飼い君
牛乳の値段ってよく上がったり下がったりしますよね。あれって、酪農家の手取りはどう決まってるんですか?
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
いい疑問だね。牛乳のもとになる「生乳」の値段=乳価には、ちょっと独特なしくみがあるんだ。これを知ると、酪農のニュースがぐっと分かるようになるよ。

牛乳の値上げがニュースになるたび、その裏で動いているのが「乳価(生乳の価格)」だ。乳価のしくみは少し独特で、これを知ると酪農経営のリアルが見えてくる。現場目線でやさしく整理する。

⚠️ 本記事は一般的なしくみの概要です。価格や制度は年・地域で変わります。最新の数値は農林水産省や乳業団体の発表でご確認ください。

乳価は「交渉」で決まる

まず大前提。生乳の価格(乳価)は、市場で自由に決まるのではなく、生産者団体(酪農家側)と乳業メーカー(牛乳・乳製品を作る会社)の合意で決まる。この合意までの過程を「乳価交渉」と呼ぶ。

交渉では、

  • 生乳の需要と供給の状況
  • 市場の動向・経済状況(飼料高騰なども)
  • 乳業者と酪農家の経営状況

などを勘案して、価格が決められる。だから乳価は、飼料代の高騰などを受けて見直されることがある。

飲用は高く、加工は安い「用途別乳価」

ここが、乳価のいちばん独特なところだ。生乳は、何に使われるか(用途)によって値段が違う。これを「用途別乳価」という。

用途乳価の傾向
飲用向け(牛乳など)高い・優先的に分配される
加工向け(チーズ・生クリーム等)中くらい
脱脂粉乳・バター向け安い・需給調整の役割

飲用(そのまま飲む牛乳)は鮮度が命で需要も安定しているため高め。一方、脱脂粉乳やバター向けは安く、余った生乳の受け皿(需給調整)という位置づけになっている。

牛飼い君
同じ生乳でも、何になるかで値段が違うんですね。
牛飼い君
さんぼう君
さんぼう君
そう。だから「牛乳がたくさん余る」と、安い加工向けに回る量が増えて、酪農家の手取りに響くんだ。需給のバランスがすごく大事なんだよ。

指定団体と「一元集荷多元販売」

酪農家が搾った生乳は、多くの場合、指定団体(生産者団体)を通じて売られる。

指定団体は、酪農家から生乳を集め、複数の乳業メーカーに販売する。これを「一元集荷多元販売」という。1か所に集めてまとめて売ることで、価格交渉力を持ち、安定供給を支えるしくみだ。

なお2018年以降は、酪農家が全量を指定団体に出さず、**一部を別のルートで売る「部分委託」**もできるようになっている。

酪農家の手取り=「プール乳価」

では、酪農家の手取りはどう決まるのか。指定団体は、各酪農家に対して、

**用途別乳価の加重平均(平均価格)から、共同の経費(共販経費)を差し引いた、同じ「プール乳価」**で支払う。

つまり、飲用が多く売れた年は手取りが上がりやすく、加工に多く回った年は下がりやすい。「自分の生乳がどの用途に回るか」が、酪農家の収入を左右するわけだ。

なお近年は、飼料高騰を背景に飲用向け乳価が引き上げられる一方、加工用乳価は在庫状況などから据え置かれる、といった動きも見られた。

よくある質問(FAQ)

Q. 乳価はどうやって決まりますか?

生産者団体と乳業メーカーの「乳価交渉」で決まります。需給の状況、市場・経済の動向、双方の経営状況などを勘案して合意します。

Q. 用途別乳価とは何ですか?

生乳が何に使われるか(用途)で価格が違うしくみです。飲用向けは高く、脱脂粉乳・バター向けは安く需給調整の役割を持ちます。

Q. 指定団体とは何ですか?

酪農家から生乳を集め、複数の乳業メーカーに販売する生産者団体です。「一元集荷多元販売」で価格交渉力と安定供給を支えます。

Q. 酪農家の手取りはどう決まりますか?

用途別乳価の加重平均から共販経費を引いた「プール乳価」で支払われます。飲用に多く回る年は手取りが上がりやすくなります。

まとめ──乳価を知る者が、酪農を読む

  • 乳価は生産者団体と乳業メーカーの交渉で決まる
  • 用途別乳価で、飲用は高く・加工(脱脂粉乳/バター)は安い
  • 指定団体が一元集荷多元販売で支える
  • 酪農家の手取りはプール乳価(用途別の加重平均−共販経費)

一滴の乳に、交渉と用途の値が宿る。乳価のしくみを知れば、酪農のニュースも経営も、ぐっと読み解けるようになる。

参考・出典

  • 日本乳業協会「生乳取引のしくみ」
  • J-milk「生乳の生産・流通構造」
  • 農林水産省「飲用牛乳の適正な価格形成について」
  • らくする「用途別乳価とは」

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─ さんぼう君よりひとこと ─

この記事は、和牛農家の息子としての経験と、飼料営業として全国の現場で見聞きしたことに基づいています。 個別の経営判断は、必ず担当の税理士・士業・JA・農業委員会等にご相談ください。

この記事を書いた人

さんぼう君

和牛繁殖農家・野菜農家の息子。実家の「売り先が限られている/やり方次第でもっと稼げるはず」 という課題を追ううちに、畜産・農業経営の知識を深く積み上げてきました。 現場で学んだ「リアルな農業経営」を、業界外の人にもわかる言葉でお伝えしています。

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